新型コロナの治療薬候補「アビガン」の有効性をめぐって報道が錯綜している。共同通信は5月19日に「臨床研究で明確な有効性を示せず」とする記事を配信し、NHKもこの内容を後追いした。安倍首相はアビガンに期待を寄せ、「5月中の承認もあり得る」と公言している。いったい何が起こっているのか——。
エボラ出血熱に有効な可能性のある日本製の未承認薬「ファビピラビル(商品名アビガン)」。富士フイルムホールディングス傘下の富山化学工業がインフルエンザ治療薬として厚生労働省から認可を得ている(2014年8月26日、東京都)
写真=EPA/時事通信フォト
エボラ出血熱に有効な可能性のある日本製の未承認薬「ファビピラビル(商品名アビガン)」。富士フイルムホールディングス傘下の富山化学工業がインフルエンザ治療薬として厚生労働省から認可を得ている(2014年8月26日、東京都)

事実なら「特ダネ」だったが……

共同通信が5月19日に配信した記事によると、新型コロナウイルス感染症の治療薬候補「アビガン」は、国の承認を得るために行われている臨床研究で「明確な有効性が示されていない」「現時点で薬として十分な科学的根拠が得られていない」という。記事がその根拠として挙げたのが第三者機関による「中間解析結果」という報告書である。

アビガンは現在、開発メーカーである富士フイルムが有効性を評価するための治験を行っているほか、複数の医療機関が臨床研究を進めている。安倍首相は「有効性が示されれば5月中にも承認する」と公言しており、時期的には治験や臨床研究の成果がまとまる頃合いにさしかかっていた。

そんなタイミングを捉えて共同通信は「有効性は確認されなかった」という内容の記事を5月19日の深夜に配信した。これが事実なら特ダネだ。安倍政権のみならず日本中が期待しているアビガンの早期承認はむずかしくなる。