例えば、東京都民の中から、納豆をたくさん食べていた人とほとんど食べなかった人を選び、10年後の死亡率を調査するといった方法です。ただし、納豆をたくさん食べていた人と、ほとんど食べなかった人は、その他の健康習慣も違う可能性があります。できる範囲でそれらの影響を統計的手法を用いて取り除きますが、完ぺきには取り除くことはできません。

納豆そのものの健康への影響をきちんと評価する

そこででてくるのが、②よりもエビデンスが強い③ランダム化比較試験です。人間集団をくじ引きのような方法を用いて無作為に同質的なグループに分け、それぞれに決まった行動を取ってもらい、その結果を追跡します。例えば、40歳の1万人を5000人ずつ、納豆を毎日1パック食べるグループと全く食べないグループに分け、10年後の死亡率を比べたりする方法。2つのグループの間で納豆を食べる習慣以外の条件がほぼ同じであるため、納豆そのものの健康への影響をきちんと評価することができます。

津川友介『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)
津川友介『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)

そして、③を上回る最強のエビデンスとなるのが、複数の③を統合解析した「メタアナリシス」。解析する研究データが多ければ多いほど、エビデンスは強くなるのです。そこで、健康効果について現在、研究結果が出ている食品のうち、エビデンスのレベルによって、5段階にグループ分けしたのが表です。

グループ1は、メタアナリシスや③で健康効果が証明された食品、グループ2は、複数の②で健康効果の可能性が示されたが、まだ効果がはっきりわからない食品と考えてください。つまり、野菜や果物、魚といったグループ1の食品を積極的に摂る一方で、牛肉や豚肉、白米のように、健康へのマイナス効果が証明されたグループ5の食品をなるべく摂らないことが、「科学的に正しい食事」だといえます。

ここで1つ、強調しておきたいのが、健康に有効なエビデンスがあるのは、“食品”であって、食品の“成分や栄養素”ではないということ。さまざまな成分や栄養素を含んだ食品を丸ごと摂らないと、健康効果は期待できないのです。食品から抽出された成分が、よくサプリメントとして出回っていますが、それが人体に有効とは限りません。成分の有効性を、動物実験でしか確かめていないようなケースも少なくないからです。中には、成分だけ摂取すると、かえって健康を害するというケースも報告されているので、注意しましょう。

ただし、一部の成分や栄養素では、健康効果に対する研究が進んでいます。例えば、ビタミンDは、複数のランダム化比較試験をまとめたメタアナリシスで、通常の風邪の予防効果が報告されています。新型コロナウイルス感染を予防する効果はまだ証明されていませんが、風邪の1~2割はコロナウイルス(新型コロナではなく旧型コロナ)であるといわれているため、今後の研究結果次第では、ビタミンDが新型コロナ予防にも有効であるという可能性もあります。

健康に良いか悪いかの5つのグループ