手洗いをしたり、マスクをしたりすることで、感染を防ぐという行為も大切です。しかし、マスクの穴を1メートル四方だとすると、インフルエンザウイルスは野球のボール、コロナウイルスはピンポン球ぐらいの大きさです。そうなるとどんな生活をしていても、どこかで風邪と同じように感染して発症することもあるでしょう。ならば、自分の免疫力を高めておくことが得策です。

「新型コロナウイルスはいつ収束するのか?」とよく聞かれます。人類にとって初めて体験するウイルスなので、予測は困難です。ワクチンがいつできるのか、それよりも早く人間が集団免疫を獲得するのか、まだ誰にもわかりません。

そこで私から伝えたいのは、「あまり悲観的にならないほうがいい」ということです。この後説明しますが、暗い気持ちでストレスを抱えると、免疫力は落ちていきます。あまりナーバスにならずに日常生活を送ることは、ウイルスに対処していくうえで非常に重要です。

(1)食生活

唾液の分泌で「防波堤」を強化

口の中は、細菌やウイルスなどの外敵が入ってきやすい「入り口」と言えます。そこで第一の防波堤になるのが、唾液です。

唾液の中には抗菌・殺菌作用のある酵素が含まれています。ペルオキシターゼという酵素は、物質を酸化させる力が強く、細胞内の遺伝子を傷つけ、がん化する原因をつくる活性酸素を中和する働きを持っています。

唾液を分泌するのに大事なのは、よく噛んで食べることです。また唾液は、加齢に伴う唾液腺の老化、抗アレルギー薬の服用、ストレスなどによって分泌量が減ることもあります。病気を治すときに薬はもちろん必要ですが、日常生活で何かあったらすぐ薬を飲む、という習慣はなるべく避けたほうがいいでしょう。

では、どんな食材を食べればいいのでしょうか。積極的に摂取したいのは、きのこ類です。きのこ類に含まれる多糖体のβ-グルカンはNK細胞を活性化し、ウイルスに対して抵抗性があると言われています。中でも、しいたけ由来のβ-グルカンは、臨床現場で抗がん剤として使用されることもあります。またきのこ類は不溶性の食物繊維が多いため、便通が改善されやすくなり、腸をキレイにする効果もあって、免疫力アップにつながります。

注目したい成分が、野菜や果物などに含まれる色素、香り、苦みなどの成分である植物性化学物質「ファイトケミカル」です。免疫細胞のマクロファージを活性化し、さらに抗酸化作用もあります。特に抗酸化力が強いと言われているのが、ブロッコリーの中に含まれるファイトケミカルの「スルフォラファン」です。ブロッコリーの細胞が壊れるときに生成されるので、よく噛むかスムージーなどにして摂取するとよいでしょう。