そんなズナールに再会したのは19年、エチオピアの首都アディスアベバでのユネスコ主催「世界報道自由デー」のイベントだった。このとき、マレーシアでの状況は大きく変わり、ナジブ元首相はマネーロンダリングの罪などで逮捕・起訴され、裁判が始まっていた。
権力の不正に対し故郷でペンと共に闘う
そしてミャンマーで拘束されていた2人のジャーナリストには世界報道自由賞が贈られ、ほぼ1カ月後に彼らは500日を超える投獄から釈放された。ズナールは同年『Fight Through Cartoons(漫画と共に闘う)』を出版。「亡命を考えないのか」と言われても、渡航禁止令が下されてもズナールは権力の不正に対し故郷でペンと共に闘う姿勢を崩さなかった。
逮捕されても手錠を見せながらカメラに手を振る彼はどの写真を見ても笑顔だ。「どんな権利を奪われても、笑っていれば大丈夫。笑いまで禁止にされたらそのときは本当に終わりかもしれない」。
ユーモアと芸術で権力への監視の手を緩めないズナール。今日も笑いながらペンをとるだろう。