大手マスコミを遥かに凌駕するメディア

メディアにそっぽを向かれ失意と怒りの中にあった浦上氏が独自に取り組み始めたのが「一人通信社」だ。中国の現地情報を、日本語に翻訳してTwitterで公開した。テレビ局のプロデューサーに「うちより情報が速い」と一目置かれるなど、内容と速さで大手マスコミを遥かに凌駕するメディアを作り上げた。

浦上早苗『新型コロナvs中国14億人』(小学館)
浦上早苗『新型コロナvs中国14億人』(小学館)

「コロナの深刻さを理解してもらえなかった怒りから始めた一人通信社の作業は、次第に責任感に変わっていました」

その一人通信社の活動を基に書き上げたのが本書である。この半年程でコロナ情勢がどのように推移したかを時系列で把握するのに役立つ一冊だ。

そんな浦上氏はコロナ・ショックを「通信簿」に例える。

「コロナ前からやるべきことを着実にやっていた国や企業が高い評価を得ました」

確かに、給付金支給の遅滞は行政のデジタル化、在宅勤務をめぐる混乱は柔軟な働き方がそれぞれ導入されていなかったために生じたと言える。どちらも随分前から議論されていたが、十分に導入が進んでいないと新型コロナウイルスに評価されたのだ。

コロナ対応における日本の通信簿は、優等生のそれではない。しかし、感染第1波を中間試験と見れば、期末試験となる第2波で挽回する余地は多分にある。無論、期末で良い成績を取るには、中間試験の振り返りが必要だ。

浦上早苗
1974年、福岡市生まれ。経済ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業後、98年から西日本新聞社。2010年に中国・大連の東北財経大学などを経て、米中ビジネスニュース翻訳、経済記事執筆・編集など。
(撮影=よねくらりょう)
【関連記事】
哲学者が今なぜ、教養の必要性を訴えるのか
四面楚歌の中国・習近平…香港からヒトとカネの大流出が始まってしまった
橋下徹「日本は英米加豪の中国非難声明に参加するべきだったのか」
なぜ中国政府は新型コロナを世界中に広めた責任を認めないのか
橋下徹「これが一番効果的な中国批判の組み立て方」