香港に中国本土並みの国家安全法の制定を目指す中国に対し「香港の自由や民主主義を守れ」と批判するのは簡単だが、事前に論理を詰めておかないと相手に矛盾を突かれるだけ。では日本はどうすればいいか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(6月16日配信)から抜粋記事をお届けします。
全人代/表決する習主席
写真=AFP/時事
北京の人民大会堂で開かれた中国全国人民代表大会(全人代)で採択された香港国家安全法方針について表決する習近平国家主席(中国・北京)=2020年5月28日、中国北京

自国の国家主権を守りたいなら他国の国家主権も尊重せよ

国家主権とは、他国という外野からとやかく言われないことにこだわりをもつことがその基礎となる。それを持つのが独立国家というものだ。他国にとやかく言われることを安易に認めてしまうと、ゆくゆくは国家の独立性を失ってしまう。

もちろん国際社会で確立されたルールや、国家間で合意したルールに従うことは当然であり、その範囲では他国から干渉を受けることになるが、それも国家主権に基づいた自らの判断である。

(略)

これは大国だけでなく北朝鮮のような国であっても、他国から圧力を加えられることを拒否することにこだわっている。国力のない北朝鮮は、核兵器を開発することで貧弱な国力を補う戦略だ。

台湾も中国に飲み込まれないように、独立性を保つことに必死になっている。

(略)

どの国も、他国から「干渉されたくない」という国家主権を守るのに必死なのである。

日本ももちろんそうだ。

そして自国の主権を守ろうと思えば、すなわち自国の主権を他国に尊重させようと思えば、他国の主権も尊重しなければならない。

これが《フェアの思考》だ。

自国の主権を他国に尊重せよと迫りながら、自らは他国の主権を尊重しないなら、それはアンフェアの思考の典型例だ。

(略)