日経平均の上昇には2つ理由があった
このリーマンショックの経験を経て、中央銀行は金融危機が起きたらどのような事態に陥るのかを脳裏とデータに刻み込まれました。今回は、彼らが「金融危機を起こしてはいけない」というはっきりとした「命題」と「解決策」を分かっていることが今の株高につながっています。
日経平均の上昇には2つの理由があり、1つは、個人投資家が買い支えていたからです。3月に国内の個人投資家は8454億円の買い越しとなっています。2つ目は4月に日銀がETF(上場投資信託)を購入したためです。日銀は今年3月に、ETFの買い入れ上限額を年間6兆円から12兆円に拡大し、この買い入れ額の拡大を行っています。特に、3月の急落時は1日2000億円のEFTを購入しています。株価が戻ってきた直近は1日1000億円の購入となっていますが、東証1部の売買代金が1日2兆円を割るような水準のボリュームの中で、後場だけで1000億円の投入は大きなインパクトです。これが株高を演出した要因です。
FRBのバランスシートの拡大は救うのか、崩壊を招くのか
4月にFRBはこれまでタブーとされていた投資不適格債も買い入れの対象としました。倒産確率が高いグループの資金繰りを支えることを約束したことになり、債券市場、株式市場も幅広い業界で買いが向かいました。何としても、金融危機だけは避けなければならないという意志が表れているのが、無期限の金融緩和とジャンク債まで買う行為なのです。
今回のFRBのバランスシートの拡大がどれほど、“異常値”であるか過去と比較してみます。三菱UFJモルガンスタンレー証券の藤戸レポートによるとFRBは「2017年10月から2019年5月まで資産圧縮」を行っていました。その後「2019年9月以降月額600億ドルの購入」をしており、この時点では、緩やかにバランスシートの拡大を行っていました。が、コロナが発生し一気にバランスシートの拡大に突き進んでいます。「2020年3月15日緊急利下げと7000億ドルのドル資産購入、4月9日に2.3兆ドルの資金供給の発表」と、FRBの直近のバランスシートの拡大は、短期間に異例の規模での金融緩和となっています。
この過剰流動性が果たして、本当に金融危機にならないように救うのか、むしろバブルを起こして後に崩壊へと向かうのか、誰も正解が見えないまま突き進んでいるのは間違いないのです。