あの飢餓状態が嘘のように、マスクは店頭に山積し価格もダダ下がり。なのに、いまだ配り終えぬ466億円の「あのマスク」。あれはいったい何なのか?
2つの布マスク
写真=iStock.com/Ryosei Watanabe
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決定から2カ月、いまだ半数弱

色々あり過ぎて、すでに遠い昔のようにも思える4月1日、安倍首相が自ら「全世帯に2枚ずつマスク配布」と発表した。政府の対策を注視していた国民に対し、「旅行券」「牛肉券」……と次々に気持ちを萎えさせてくれていたところへ、決定的なダメ押しとなった格好だった。自信満々の看板政策のつもりだったことは想像に難くないが、なぜ一家に2枚だけ? なぜ現金じゃないのか? 等々、我々下々の民は疑念ばかりが膨らんだ。

1億3000万枚の布製マスクを、日本郵便を通じて5月中に全国に配布……ということだったが、厚労省発表のデータでは、6月に入った点でようやく半数を超えた(8日時点で75%予想)。

致命的だったのは、決定から配布に至るまでの期間が圧倒的に「遅い」ことだった。発表当時こそ転売ヤーが跋扈して信じ難い高値がつき、早朝のドラッグストア前に行列ができるなど全国的な飢餓状態が続いていたが、全国の配布状況がいまだ25%(5月27日時点、厚生労働省推計)の時点ですでにマスクは店頭にあふれ返っているし、価格もほぼコロナ前の水準に。「マスクを配布したおかげで需給関係が改善し、価格が下がった」という自画自賛は失笑ものだろう。