最高の部品は、最悪のリーダーになる

同書によると、戦前の軍事官僚、戦後のエリート官僚や大企業社員、さらに連合赤軍メンバーの思考パターンの共通項は、次の3つだ。

①自分たちこそ選ばれたエリート官僚であり、日本の運命は自分たちの努力にかかっている
②この努力は、所与の特定した技術の発揮においてなされる
③したがって、この所与・特定技術の発揮においてのみ、全身全霊を打ち込めば、その他の事情は自動的にうまくゆき、日本は安泰となる

特に③は、先の「マスクを配る理由」を得々と公開した経産官僚の物言いともぴったり重なるのではないか。

同書は「官僚的思考の致命的限界は、イマジネーションの不足と視座の限定からくる、新環境の総合的把握能力である」と指摘する。これはそっくりそのまま、「官邸官僚」の主導でマスク配布を決めた首相官邸の意思決定に重なる。しかも、本来ならば官房長官あたりが担うべき役割を、選挙で選ばれたわけでもない人々が勝手に肩代わりしているのである。恐ろしいことに、同書は、「このような人々は、分業の部品としてみる限り最高の部品である。しかし、ひとたび全体のリーダーとなるや、最悪のリーダーとなる」とも指摘しているのである。

このままでは、マスクの失態の責任を誰も負わぬまま、またぞろ思い付き同然のナナメ上政策を繰り出さないとも限らない。総合的な政治判断よりも、特定の官僚の思惑が突出して優先され、その結果組織の暴走が止まらなくなることがどんな悲劇を呼んだかは、革新官僚と中堅どころの軍人が暴走して国の先行きを決めた80年前の大本営を引き合いに出すまでもないだろう。

戦前から戦後、平成から令和の現在に至るまで、国事に携わる官僚の行動パターンはまったく変わっていない。今井秘書官らに頼るようになった安倍首相が、「驚くほど外部の状況を知らない」と心配する声も漏れ伝わってくる。ちゃんと先頭に立って、首相のポジションに必須の包括的な政治判断の力をぜひ発揮してほしいものである。

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