一国の宰相に苦言を呈すのは自粛したいが、現実は厳しい

一国の宰相に苦言を呈すのは極力自粛したいところだが、現実は厳しい。朝日新聞が5月23、24日に実施した世論調査で内閣支持率は29%に低下し、不支持率は52%に上った。この傾向は、毎日新聞と社会調査研究センターによる23日の調査でもあらわれている。前回調査(5月6日実施)から13ポイントも急落した内閣支持率は27%で、不支持率は19ポイント増の64%に達している。

安倍総理は「一喜一憂しない」との姿勢を見せるが、自民党内は動揺が隠せない。その理由は、朝日新聞の調査で自民党の政党支持率が前回調査(5月16、17日)から4ポイント低下。毎日新聞などの調査でも前回から5ポイント減の25%に落ち込んだことがある。かつて「参院のドン」と呼ばれた自民党の青木幹雄元参院議員会長は、内閣支持率と政党支持率の合計が50を下回ると政権が倒れるとの「青木の法則」を残している。それに基づけば朝日で「55」、毎日新聞などで「52」となり、すでに危険水域に入っているのは間違いない。

「安倍おろし」をするだけの余裕が自民党にないのが実情

現在の衆議院議員の任期は来年10月までで、安倍総理は自身の自民党総裁任期満了が約1年4カ月後に迫る中、レームダック化を避けるための解散総選挙を模索する。だが、ここまで政権や自民党の支持率が低下した今、「竹槍で戦はできない」(自民党中堅議員)と安倍総理・総裁の下での総選挙に難色を示す声は徐々に高まりつつある。コロナ危機到来で、さすがに目立った動きは見られないものの、石破茂元幹事長が「けじめがついたら職を辞すのも1つのあり方だ」と辞任を求めたのは、そうした議員心理を反映したものだろう。

とはいえ、現下の状況では「安倍おろし」を画策し、自民党総裁選を実施するだけの余裕がないのが実情でもある。そこで与党内の一部から囁かれ始めたのが、公明党の山口代表を「暫定総理」に据えるウルトラCだ。コロナ収束が見えた段階で安倍総理に辞任を促し、自民党の支持率が回復するまでの間は「暫定内閣」として山口氏に総理の座を委ねるというプランである。