公明党の存在感は高まりを見せる

実際、コロナ危機下に公明党の存在感は高まりを見せている。「ポスト安倍」候補の1人とされる自民党の岸田文雄政調会長がまとめた「減収世帯への30万円給付」案は、山口代表が連立離脱もちらつかせて安倍総理に修正を迫り、土壇場で「1人あたり10万円給付」に変更。朝日新聞社員や産経新聞記者との賭けマージャンで辞職した黒川弘務前東京高検検事長の処遇についても、公明党の石田祝稔政調会長が「事実であれば職務を続けられる話ではない」といち早く辞任を要求し、その通りの流れになった。困窮する国民の感覚や厳しい世論に敏感な公明党は連立政権に欠かせないと見る自民党議員は多い。

ある全国紙政治部デスクが解説する。「自民党の多くは選挙で今や公明党の支援なくして勝てない。自分たちの任期満了が近づく中で、もし公明党に連立を離脱されたらバッジを失うと青ざめた人たちは少なくない。しばらくは公明ペースで政治は進むだろう」。

連立政権とはいえ、国土交通大臣など一部のポストしか譲ってこなかった自民党だが、政権与党の座を獲得するためならば何でもするのが同党のすごさでもある。自民党は1994年6月からイデオロギーで対立関係にあった社会党とも連立政権を組んだが、それは前年の衆院選で過半数割れを招き、その座を確保するための策だったことは記憶に新しい。

黒川氏を巡り燃え上がった火は消えそうにない

悲壮感が漂う自民党内の雰囲気は安倍総理も把握してはいるものの、悩ましいのはコロナ危機下では得意の外交力を生かすことはできない上、「すべての矢が総理官邸に向かってくる」(政府関係者)ということだ。中でも、1月に閣議決定までして定年延長を認めた黒川氏をめぐる政府対応への批判は強く、検察庁法改正案の今国会成立見送り後も「なぜ懲戒処分にならないのか」「立件されないのはおかしい」といった厳しい声は続く。

内閣支持率について、フジテレビ上席解説委員の平井文夫氏は5月25日のフジテレビ系「バイキング」で、「数字はかなりヒステリックに出ているが、いずれ戻ってくる」と解説している。だが、訓告処分となった黒川氏の処分をめぐり総理官邸が「懲戒」にはしないと、法務省の判断を覆していた疑惑を共同通信が報道。菅義偉官房長官は記者会見で「法務省から任命権者である内閣に報告があり、法務省の決定に異論がないと回答した」と否定したものの、燃え上がった火はなかなか消えそうにない。