そのままの生活では頭痛や食欲不振が起きることも

睡眠相後退症候群は思春期から青年期に起きやすく、遅刻や欠席を繰り返すことが多くなります。それが原因で、不登校になる子どもたちも多いと聞きます。

睡眠相前進症候群は、睡眠時間が前にずれ、起床時間が極端に早くなります。寝るのはだいたい午後5~7時で、起きるのは深夜12時~午前2時。人間の場合は、固有の体内リズムが24時間より少し長いので、前にずれる症状は稀だと言われています。

ただし、高齢になると前進傾向が出やすくなります。仕事をリタイアした高齢者でない人の場合、後退症候群よりは仕事や学業に支障をきたすことは少ないと考えられますが、夕方近くにパフォーマンスがガタ落ちする人は注意が必要です。

後ろにずれるにしても、前にずれるにしても、いったん固定されると、ずれを修正するのは容易ではありません。ずれたまま社会生活を続けると、ほかの人たちの時間に合わせて無理に覚醒することになり、眠気や頭痛、倦怠感、食欲不振など体のさまざまなところに不調が出てきます。内因性概日リズム睡眠障害の場合、入院加療で症状がよくなることも多いです。

病院などでは、食事時間や消灯時間や起床時間は固定されていますので、規則正しい生活が強いられます。また個人では治療に対して強い動機付けを維持するのは難しいですが、医療チームとの連携で、持続する強い動機づけが維持できるというのも一因であると思われます。退院後、再びリズムがずれないように注意を払うことが大切です。

体内時計をリセットできない「フリーラン」とは

体内時計をリセットする機能が働かなくなるのが、フリーラン(非24時間睡眠覚醒症候群)です。後退症候群と前進症候群は、一般の人たちの睡眠時間とずれていますが、就寝・起床の時間はリズムが固定されているので一定しています。

しかし、フリーランの場合は、少しずつずれていくからやっかいなのです。

たとえば、実験用のマウスやラットは、真っ暗でまったく光がなくても、餌さえあれば生きていけます。その生活が3~4カ月続いても、健康上に問題が起きることはありません。

光をまったく感知しない環境に置かれると体内時計をリセットすることがなくなるので、ラットやマウスは、自分に備わっている固有のリズムで生活します。それが、フリーランです。マウスの場合なら、1日23.7時間くらいで生活します。

人間の固有のリズムは、なかなか判別することができませんでした。というのは、人間の場合、完全に真っ暗にすると、長期間生活することができないからです。2週間くらい続けると精神に変調をきたす人も出てきます。

外の光をまったく感知できない実験用の施設をつくることができて、ようやく人間のリズムを計測することができました。