安倍首相が「2020年改憲」を断念した日だった
5月3日は、憲法記念日。この日は毎年、護憲派、改憲派が全国各地で集会を開き「憲法を守ろう」「改憲の実現を」と訴える日だ。だが、今年は、新型コロナウイルスの感染拡大で、大規模な会合が行われず、動画投稿サイトなどで中継する形で行われた。
異例づくしの憲法記念日は、安倍晋三首相にとっては屈辱の日でもあった。3年にわたって「2020年施行」を目指してきた安倍氏の改憲スケジュールが実現しないことが事実上確定した日でもあったのだ。
ビデオメッセージでひっそり口にした「敗北宣言」
安倍氏は3日、改憲派の民間団体が開いた「憲法フォーラム」のオンライン集会にビデオメッセージを寄せた。「フォーラム」がオンライン開催となったのは初めてだが、安倍氏がビデオメッセージを寄せるのは毎年恒例のこと。ここで改憲に向けた決意を語り、改憲派を小躍りさせてきた。
記憶に新しいのは2017年。安倍氏はフォーラムにビデオメッセージを寄せ、「2020年を、新しい憲法が施行される年にしたい」と表明。20年に東京五輪・パラリンピックが開かれることを引き合いに20年を「五輪と改憲施行の年」と位置づけたのだ。以来、「20年施行」は改憲勢力、護憲勢力のせめぎ合いの中心点にあった。
今年、安倍氏はビデオメッセージで何を訴えたのか。まず感染拡大阻止のため大会をオンライン中継で実施することにした主催者に感謝を表明。その上で、緊急事態条項の新設や、憲法9条に自衛隊を明記する必要性を訴えた。ここまでは翌4日の朝刊各紙にも掲載されているのでご存じの人も多いことだろう。
問題はここからだ。安倍氏はスピーチの後半、3年前の自身のスピーチに触れ「3年前のビデオメッセージで私は『2020年を、新しい憲法が施行される年にしたい』と申し上げましたが、残念ながら実現にはいたっておりません」と語った。安倍氏は今年のビデオメッセージで「20年施行」の敗北宣言を行ったのだ。