新型コロナウイルスの感染者数、死亡者数が大々的に報じられる中、なぜ退院者数は強調されないのか。右肩上がりに伸びていく累計感染者数のグラフに恐怖している国民も多いだろう。実は、マスコミが退院者数のグラフを報道できないことには理由があった——。
なぜマスコミは“治った人”を大々的に報道しないのか
4月7日に7都府県に緊急事態宣言が発令されてから約3週間。7日の会見で安倍晋三首相は「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます」とコメントした。その発言に合わせるかのように、マスコミ各社が強調するのは「今日1日の感染者・死亡者数」と「累計感染者・死亡者数」だ。
例えば、4月26日2時17分に配信された朝日新聞デジタルでは、「新型コロナウイルスの感染者が25日午後10時半現在で新たに368人確認され、国内の確認は1万3229人となった。死者は15人増え、360人」と、26日に新たに判明した感染者数と死亡者数、そして累計の数字を強調して報道している。
もちろん、日ごとの感染者数推移を追うことで、感染増加のペースをつかむことは大切だ。政府は緊急事態宣言の発令によって、1日あたりの感染者数を100人以下に抑えようとしている。だが、マスコミ各社がそろってコロナから回復した人、つまり「退院者数」の数を報じないことに違和感を抱かないだろうか。
新型コロナウイルスにはワクチンも特効薬もない。これでは、「ひとたびコロナにかかったら治らない」というイメージを国民に植え付け、いたずらに恐怖をかき立てかねないのではないか。さらには、病院がパンクして機能まひする「医療崩壊」の懸念も増幅する。先ほどの朝日新聞デジタルの記事では、最後に「退院者+130人(3311人)」と記されているが、申し訳程度の書きぶりだ。