非常事態でもお役所的な都の対応
退院者数が見えない中では、医療崩壊への懸念が大きくなる。26日の西日本新聞によると、日本医師会の横倉義武会長は、新型コロナウイルスの感染者が急増している福岡県について「医療崩壊の一歩手前」と強い危機感を示している。
同新聞で横倉会長は以下のようにもコメントしている。「当初はPCR検査で陽性反応が出た人を全員入院させたため、病床が足りなくなってきた。福岡県内の感染者も600人台まで増え、東京都と同程度に医療崩壊の懸念がある。今は一歩手前で食い止めているが、このまま増えると危ない。軽症者はホテルに移すなど適切に対処してほしい」
また、日本外科学会などは8日までに、手術の実施時期を緊急度に応じて判断し、致命的な病気ではない外来手術や、健康診断の胃や大腸の内視鏡検査などは延期するよう促す提言をまとめている。新型コロナによって病院の手術スケジュールに影響が出て、がん手術が延期される事例も実際に発生しており、そういった意味では医療崩壊は既に始まっているといってもいいだろう。
医療崩壊の発生を探る上で、退院者数がカギになるのは言うまでもない。情報の受け手の利便性を考慮せず、病院の統計を横流しにして退院者と死亡者を区別せずに発表していた都の対応は、いかにもお役所的と言わざるを得ない。未曾有の事態に混乱を極めているのは察するが、非常事態だからこそ正確な情報を発信するのは基本ではないだろうか。