患者が増加している皮膚疾患として注目を集めているのが「乾癬(かんせん)」。赤く盛り上がった発疹に鱗屑(りんせつ)ができ、カサカサした薄皮がはがれていく慢性疾患である。

皮膚のはがれ落ちるサイクルは、通常約28日だが、乾癬の病変部では、わずか4日程度。

皮膚は、表皮の下に真皮があり、真皮の部分に毛細血管が入ってきている。乾癬になると、正常な表皮がつくられず、体内で自己免疫反応が起き、真皮部分に白血球などの血液成分が集まって、炎症を起こす。

原因がまだよくわかっていないので、根本的な治療法がなく、治りにくい疾患である。

乾癬には「尋常性乾癬」「膿疱(のうほう)性乾癬」「乾癬性紅皮症」「急性滴状乾癬」などがあり、尋常性乾癬が約90%を占めている。

根本的な治療法がないとあって、基本となる治療は、いかに症状のよい期間を長くするかに置かれている。その武器は外用薬、内服薬、紫外線療法である。

▼外用薬
「ステロイド薬」と「ビタミンD3薬」がある。重症度に合わせて選択して使う。

▼内服薬
「ビタミンA誘導体(レチノイド)」「免疫抑制薬(シクロスポリン)」「抗リウマチ薬(メソトレキセート)」が使われている。ただし、いずれも副作用があるので、医師の服薬指導をしっかり守ることがポイントになる。

▼紫外線療法
紫外線には炎症を抑えたり、皮膚の新陳代謝を抑えるとともに、ビタミンDを体の中につくって皮膚を正常に戻す働きもある。この療法で現在、日本で行われているのは、「PUVA(プバ)療法」「UVB療法」「ナローバンドUVB療法」の3つである。

PUVA療法では紫外線に反応しやすい「ソラレン」という薬を服用、もしくは患部に塗った後、紫外線のUVBを1~2時間照射する。UVB療法は中波長のUVBが蛍光管から出るのを、50センチくらい離れて患部だけに照射する方法。ナローバンドUVB療法は、UVBの中から乾癬に効果のある311~312ナノメートルの波長だけを照射する方法である。

とりわけ注目されているのが、ナローバンドUVBだが、まだ日本には10台程度しか機器が導入されていないので、どこでもこの治療が受けられるわけではない。

今日の中心的治療は、3本柱の治療を上手に組み合わせて副作用を抑えるコンビネーション治療となっている。

 

食生活のワンポイント

乾癬の発症原因はまだよくわかっていないが、体質的素因のうえに、欧米型の生活といった環境因子が重なって発症するといわれている。不眠、精神的ストレス、気候、風邪や扁桃炎などの感染症が引き金になることもある。

食生活、嗜好品では、以下の点に注意してもらいたい。

●タバコは吸わないようにする

●アルコールは控える

●魚介類・大豆製品を食生活の中心にする
牛肉、豚肉、鶏肉といった肉類は控えるようにし、魚介類・大豆製品を中心にすえた和食にする。
食生活の欧米化が原因で患者数が増えている、という指摘が強くなされているので、十分に注意してほしい。

●カロテンを十分に摂る
体内でビタミンAと同等の働きをするカロテンは緑黄色野菜や果物に多く含まれている。パセリ、ホウレン草、ニンジン、ブロッコリー、トマト、カボチャ、スイカ、マンゴー、ビワなど。

●動物性の油や砂糖は控えるようにする
肉の脂身やバターなどのほかに、インスタントラーメンなど、油が酸化しているものは控えるのが賢明である。