“暗黒の臓器”といわれる膵臓とあって、膵臓ガンは早期発見が難しい。検査が難しいだけではなく、膵臓ガン特有の症状もない。
検査が難しいのは膵臓が多くの臓器に囲まれているからである。
症状には「腹痛」「背中の痛み」「食欲不振」「体重減少」などがあるが、これらは膵臓ガンでなくとも他の消化器疾患でも起きる、ごくありふれた症状。「胃が痛い」と訴えてある病院を受診した患者は、たまたま胃の検査で胃潰瘍が見つかり、膵臓ガンは見逃されてしまった。
平均でも、患者が症状を訴えて膵臓ガンがわかるまで、約3カ月はかかっているといわれている。
発見が遅れやすいだけに、着実に膵臓ガンの死亡者は増え続け、2004年には2万2260人となっている。
その1人に仲間入りしないためには、膵臓ガン発生のリスク要因を知っておくことである。リスク要因には、(1)「遺伝的要素」、(2)「糖尿病」、(3)「ヘビースモーカー」、(4)「慢性膵炎」など。
たとえば糖尿病の場合、本人は血糖コントロールをしっかりと行っているにもかかわらず、血糖値が大幅に乱れてしまうことがある。それは、膵臓にガンができたことで血糖コントロールがうまくできなくなるからである。
糖尿病でない人が急に血糖値が高くなったときも、膵臓ガンを疑ってみるべきである。このほか、白眼が黄色くなる黄疸で発見されることもある。この場合は、状況によっては早期に発見される。
いずれにしても、健康診断を受けるときは膵臓ガンを頭の片隅においておくべきである。
膵臓ガンの治療は「手術療法」「化学療法」「放射線療法」が3本柱となっている。患者のガンの進行状態によって、手術単独、手術+化学療法、手術+放射線療法などの組み合わせが行われる。
ただ、今日では手術の根治性を損ねることなく、残せる臓器はできるだけ残して術後のQOL(生活の質)を悪くしないようにしている。
膵臓は長さ20センチくらいの人参型の臓器で、十二指腸側から3つに分けられ、「膵頭部」「膵体部」「膵尾部」と呼ばれている。
たとえば手術療法の場合、以前はガンが膵頭部にできると「膵頭十二指腸切除」といって、膵頭部、十二指腸、胃を切除していた。それが今は、十二指腸の入り口3~4センチと胃すべてを残す「温存膵頭十二指腸切除」に進歩している。
それでも、膵管にできる進行した膵管ガンでは、全摘を行っても良い結果に結びつかないので、化学療法や放射線療法が加わる。
が、膵臓ガンの国際的対応策はまだまだ研究途上とあって、やはり早期発見を心がけるべきである。
食生活のワンポイント
前述した膵臓ガン発生のリスク要因の中で、糖尿病、ヘビースモーカー、慢性膵炎が大きなポイントとなる。
(1)タバコは吸わない!
(2)暴飲暴食はしない!
慢性膵炎は膵臓が線維化して硬くなった状態。患者には暴飲暴食タイプや胆石のある人が多い。3食を規則正しく、そして、カロリーを考えて腹八分にする。
また、このタイプは脂肪の多い食べ物を好むので、脂肪の多い食べ物は少量にする。メタボリックシンドロームと同じく、男性はへそ(腹囲)回り85センチ以下にするようダイエットすることが望まれる。
もちろん、お酒は適量以上は飲まない。適量とは、夕食時に日本酒で1合、ビールならば大ビン1本、ワインならばグラス2杯までをいう。
(3)ノンカロリー食を利用しよう!
きのこ、海藻類など、ノンカロリー食品を利用して、ダイエットの辛さをしのぐようにする。これだと副菜として1品増やすことができる。