「肉眼でもわかる、痛みを伴わない血尿」「脇腹の痛み(腰痛)」「脇腹を触ってわかるしこり(触診できる腫瘍)」――これが腎臓ガンの“3大症状”。さらに、発熱、貧血、高血圧、食欲不振、体重減少などの症状も出てくる。

ガンが大きくなっていると触診ですぐにわかる。それにもかかわらず、今でも他の臓器に転移したガンが先に発見されるケースもある。血痰が出るので調べたら肺ガン。ところが、原発は腎臓ガンだった、というケースである。

このようなケースが起きるのは、腎臓そのものの働きに起因する。

腎臓は背中側にある臓器で、腰の少し上あたりに左右2つ付いている。成人で握りこぶし大で、そら豆のような形をしている。血液をろ過して、体内で不要となった老廃物を尿として排出する。つまり、腎臓には血液が集中する。そこにガンができると、ガン細胞は血液中に入り込んで他臓器に流れていきやすい。

ただ、最近は人間ドックを受ける人が増えたことから、無症状で発見されるケースが多くなり、腎臓ガン患者の50%を占めるようになった。ちなみに、年間の腎臓ガンの患者数は約1万人、死亡者数は約4000人、男女比は3対1で男性に多いのが現状である。

この腎臓ガン治療の第1選択肢は手術。腎臓を周囲の脂肪組織とともに切除する「根治的腎摘除」と、ガン部分だけを切除する「腎部分切除」がある。さらに、手術術式はそれぞれ3通り行われている。「開放手術(開腹手術)」「腹腔鏡手術」「ミニマム創内視鏡下手術」である。

この中で、高度先進医療として注目を集めているのがミニマム創内視鏡下手術。

その術式は、まず腹部を5~6センチ程度切開する。そこから内視鏡を患部に挿入し、モニターと肉眼を併用しながら手術を行う。切除した臓器は、切開創から外に出す。

体にやさしい手術というと、腹腔鏡手術があるが、実はミニマム創内視鏡下手術は、それ以上に患者の体にやさしいといわれている。その優れている点は以下の4点。

(1)5~6センチの小さな傷が1カ所だけ。
(2)腹膜を傷つけないので、術後に内臓の癒着が起こらない。
(3)炭酸ガスを注入しないので、ガス塞栓や肺梗塞のリスクがまったくない。
(4)開放手術経験者でも対象となる。

今後、腎臓ガン手術のみならず、前立腺ガンの手術においても中核になると思われる。その一方で、手術ではなく、皮膚から直接針を刺してガン部分を焼いて治療する「マイクロ波凝固療法」や「ラジオ波焼灼療法」も、病状次第で試みられている。

 

食生活のワンポイント

腎臓ガンのリスク要因は、最近になって多少わかってきている。

以下の4項目を実践してもらいたい。

(1)禁煙!
タバコは発ガン物質が多く、腎臓でろ過されるので禁煙が第一。

(2)塩分摂取を1日7グラムに!
高血圧は腎臓を悪化させる。高血圧の原因のひとつに塩分も大きく関係する。塩分をできる限り少なく、1日7グラムに。それとともに、高血圧の人は治療もしっかり受けよう。

(3)脂肪分の摂取を抑える!
脂肪分を多く摂ると腎臓を悪化させてしまうので、肉はロースよりヒレにするなど工夫をする。

(4)腹八分で摂取カロリーを抑える!
肥満から糖尿病。このパターンを抑えるには、摂取カロリーに留意してダイエットをするようにする。糖尿病になってしまった人は、よりしっかりと食事療法を――。

糖尿病の合併症である糖尿病腎症から透析に移行する人が年間1万人を超えている。透析を受けている人は一般の人に比べて腎臓ガンに10~40倍なりやすい、といわれている。