「息」が苦しく、「喘(あえ)ぐ」状態を発作的に繰り返す「気管支喘息」。成人・小児を合わせて患者数は約400万人。
子供のころ小児喘息を患い、治癒しないまま大人になる人は20%、成人になって初めて発症する人が80%、といわれている。
気管支喘息の特徴であるゼイゼイ、ヒューヒュー、ゼロゼロといった呼吸音は「喘(ぜん)鳴(めい)」といい、息をするのも苦しい状態になる。
これが発作的に起こってしまう。こうなると横になっていられず、起きて息をする「起坐呼吸」になる。
さらに発作が重症化すると、唇、頬(ほお)、手足の先などが冷たくなり、紫色になる。これは、発作によって体内に酸素が十分に取り込めないため、動脈血の酸素が低下するからである。
いわゆるチアノーゼの状態がさらに進むと、失神。極端な場合には窒息死することもある。事実、「喘息発作は生死にかかわる」と、昔はいわれていた。最近は新しい治療法が研究開発され、喘息でも発作を起こさずに生活できるようになってきた。
とはいうものの、それでも年間に3000人以上の人々がこの疾患で生命を失っている。
気管支喘息の原因は、アレルギー反応による場合が多く、小児喘息では約90%、成人喘息では約60%を占めているという。
そのアレルギーを引き起こすもとは、小児喘息ではダニが最も多い。一方、成人喘息ではハウスダスト、ダニ、カビなどが多く、最近はペットアレルギーも増えている。
アレルギー以外では、気道のウイルス感染、気候の変化、ストレス、過労、アスピリン(鎮痛解熱薬)などによるケースがある。
これらが原因となって、空気の通り道である気道、とりわけ気管支の過敏反応が起きてしまう。過敏反応を起こした気道では、内腔(ないくう)が狭くなり、前述した喘鳴という喘息に特徴的な症状を引き起こすのである。
現在、治療の中心は、原因となる気道の炎症を抑え、発作を未然に防ぐ“予防的治療法”となっている。そのため、治療の主体となる薬は、「気管支拡張薬」から吸入ステロイド薬に替わった。
吸入ステロイド薬を中心にして、そのほかに予防的に「ロイコトリエン拮抗薬」「長時間作用性β(ベータ)刺激薬」「徐放性テオフィリン薬」「抗コリン薬」なども広く使われ、患者の状態に合わせた適切な治療ができるようになっている。
食生活のワンポイント
気管支喘息の場合、基本的には発作が起こりやすいのは“体調を崩したとき”。それだけにストレスを上手に解消し、睡眠を十分にとり、規則正しい生活が大事になる。
特別な食事療法はないものの、食生活も重要ポイントになる。
小児喘息では食物アレルギーがあると、原因となる食品を摂らないようにすることがある。
成人喘息では食物がアレルゲンとなるケースはそれほど多くはないものの、卵とそばのアレルギーには要注意。とりわけ、そばのアレルギーは症状が強くでるので、十分に注意しなければならない。
また、アレルギーを引き起こす食物ではないが食物の中には、喘息のメカニズムに関係する気道を収縮させるヒスタミンやコリンといった物質が含まれているものがある。そのような食物は、体調の悪いときには控えるほうが賢明である。
ちなみにその食物とは、ホウレン草、筍、ナスなど。
このほか、アスピリン喘息のある人は、食品添加物に十分注意してほしい。食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色102号などの着色料や、安息香酸ナトリウムなどの保存料で発作を起こすことがあるからである。