「世間に充満する嘘を破壊し、ビジネスに勝利し続けた吉良氏は、コミュニケーションの達人である」――本書の出版に際し、村上龍氏が寄せた言葉である。
著者は大学を卒業するとき、3つの夢があった。その一つが、村上龍氏と仕事をすることだった。すぐに叶ったわけではない。しかし、電通に入社してからも夢を持ち続けた著者はついに、ほかの2つの夢(リチャード・ブランソン氏と仕事をすること、FIFAワールドカップの仕事に関わること)とほぼ同時にその夢を叶えた。それ以降、村上龍氏との親交を深めてきた。
本書は「夢=パッションを持ち続けたからこそ厳しい状況を幾度となく乗り越えられた」という著者が、広告マンとして得てきたノウハウ、発想法を余すところなく伝えている。
「実際にお金を稼いだり、クライアントに対峙したことがない人や評論家、研究者が書く内容とは絶対に違うという確信も自信もあります。広告会社(だけではないと思うが)の現場は本当に厳しく、知の戦いの場です。その現場でいかにクライアントの意向をくみ取るか、この言葉では通らないと見通すかなど、クライアントのために、あるいは会社のために、命がけで働いてきた中から生まれた発想法が、本書に詰め込まれている。本書を読んでもらえば、“これで企画をつくってきたんだ”“これでプレゼンテーションに勝ってきたんだ”“これでお金を稼いだんだ”ということが絶対にわかると思います。電通という素晴らしい会社で鍛えられたことが、本当に基礎になっています」
サブタイトル「他人の人生を盗めばアイデアは生まれる!」はなかなか刺激的な言葉だ。これは「1日24時間では足りない」という万人が持つ悩みに対する著者のメッセージである。
「自分以外の存在すべて、つまり“他人”の時間(=人生)をもらえれば、限られた1日が無限大に広がっていくという発想法なのです。そのためには、自分と他人との関係をしっかりとつくっていくことが重要です。本を読んだり、映画を見ることでも他人の時間をもらうことができますが、その場合でも、他人の人生を盗むという自分のスタンスを意識することがポイントとなります。他人の時間が自分自身につながっていると思えるようになるだけで、いろいろなものを見る目が変わる」
本書には、「5W1H発想法」「Yes、but発想法」「チャネル変換型発想」「引き算発想」など、即効性・実用性の高い発想法も多数紹介されている。企画力をアップさせるための仕事直結の書といえよう。