フランスとドイツはイタリアの支援要請を無視した

イギリスのジョンソン首相は3月23日、「皆さんは家にいなくてはならない。従わないときには警察が強制的に待機を命じたり、あるいは罰金を科したりする」とイギリス全土での自宅待機を強く要求した。

そのうえでジョンソン首相は食品などの生活必需品以外を販売するすべての商店を半ば強制的に休業させ、全国各地で予定されていたイベントも中止の対象にした。

アメリカでも15州以上が同様に自宅待機を求めて在宅勤務の義務化に踏み切った。こうした外出の制限が長期化すればするほど、企業の株価は下がり、世界経済は衰退していく。いわゆるコロナショックである。

感染者が急激に増加して死者の数が8000人を超え、中国の死者数(約3300人)を軽く上回っているイタリアでも期間(3月10日~4月3日)を決めて国民に自宅待機を求めている。同様にフランスでも3月17日から15日間の自宅待機に入った。

問題のイタリアはマスクやレスピレーター(人工呼吸器)などの医療用品や医療器具をEU(欧州連合)各国に求めた。ところが、である。フランスやドイツは自国の在庫確保を優先し、イタリアの求めには応じなかった。これには驚かされた。フランスとドイツはイタリアの支援要請を無視したわけである。イタリアとの国境を閉鎖するような動きまであるというからさらに驚かされる。

桜の名所では花見にまで自粛が求められた

ここにも沙鴎一歩がこれまで批判してきた自国第一主義やポピュリズム(大衆迎合)の風潮が見え隠れする。

パンデミック(世界的流行)を引き起こすような感染症をコントロール(制御)していくには、世界各国の協力が欠かせない。それなのに世界は自己中心的思考の落とし穴にはまっている。EUもしかりである。EUの基本概念の「結束」は、一体どこに行ってしまったのだろうか。

日本もまったく同じである。

3月26日には東京、神奈川、千葉、埼玉、山梨の1都4県の知事が夜間にテレビ会議を開き、「ロックダウン(都市閉鎖)を回避するために連携して感染防止の対策を進める」と確認し合い、都民や県民に人混みへの不要不急の外出自粛や時差出勤、テレワークなどの在宅勤務を呼びかけた。

28、29日の土日には、街中の商店の多くが営業を停止し、繁華街の人の姿はまばらだった。都内の桜の名所では花見にまで自粛が求められ、都立の全82の公園では飲食を伴わない場合も花見を控えるよう要請が出た。美術館や博物館も次々と閉館された。異常な光景である。