「海外と同じようなロックダウンはしない」というが…

4月7日、東京都など7都道府県を対象に「緊急事態宣言」が発令された。期間は大型連休の終わる5月6日までの1カ月。改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく、新型コロナウイルス感染症に対する防疫である。

記者会見中にマスクを触る東京都の小池百合子知事
写真=時事通信フォト
記者会見中にマスクを触る東京都の小池百合子知事=2020年4月10日、東京都庁

いま世界中がこの感染症に脅え、世界人口のおよそ半分に相当する39億人が外出制限を強いられている。

日本は今回、緊急事態宣言を出したが、これは強制的に外出を制限するものではない。7日夜、記者会見した安倍晋三首相も「海外と同じようにロックダウン(都市封鎖)を行うわけではない」と私たち国民に冷静な対応を呼びかけていた。

しかし、緊急事態が宣言されたことで社会がさらに混乱するのではないかと心配だ。

たとえば3月23日に小池百合子都知事が記者会見で「感染者が急増し、オーバーシュート(感染爆発)を起こす危険性がある。今後、ロックダウンという強硬な手段を取らざるを得ない状況も出てくる」と危機感をあらわにすると、その翌日には都内のスーパーなどで買い占めや買いだめが始まった。マスクだけでなくトイレットペーパーなども市場から消え、企業の株価も大幅に下落した。

国民が国民を監視するような最悪のケースも起こり得る

今回の緊急事態宣言では、7都道府県の知事が都民や県民、府民に対して法律(改正新型インフルエンザ対策特別措置法)に基づいて次のような要請や指示、それに強制措置が可能となった。

①不要不急の外出の自粛の要請
②クラスター(感染集団)を起こす可能性のあるライブハウスやスポーツ施設、映画館などに対する使用の制限や停止の指示
③医療品や食品の強制収用と臨時医療施設の強制的開設

いずれも私権の制限につながる可能性が強く、緊急事態宣言が抜いてはならない伝家の宝刀と言われてきたゆえんである。

もちろん感染症対策の基本は人の移動禁止と感染者の隔離である。しかし、移動禁止と隔離が行き過ぎると、私たち国民の自由を奪うだけではなく、不安を強く煽る。感染者に対する差別や偏見の意識を増大させ、社会を混乱させる危険性がある。戦前のように政府の姿勢を正そうとするジャーナリストを非国民と呼び、国民が国民を監視するような最悪のケースも起こり得る。

すでに新型コロナウイルス感染症の患者を診ている病院の医師や看護師らの家族が偏見の目で見られ、学校や会社で差別されていると報じられている。

かつて伝染病と呼ばれた感染症は、社会の病でもあった。