小池都知事は安倍首相に対し、緊急事態宣言の発令を強く求めた

小池百合子都知事の勢いはすごい。3月23日のロックダウン発言の後、25日の記者会見では「オーバーシュートの重大局面だ」と危機感を煽り、翌26日の夜には首相官邸を訪ね、安倍首相と会談している。会談では感染が都内で拡大している現状を訴えながら「国の大きな力強い協力が必要だ」と緊急事態宣言の発令を強く求めた。

安倍首相は「収束に努力している東京都を一体的に支援する」と応じたというが、沙鴎一歩があとから周辺に取材したところによると、安倍首相は小池都知事に押し切られ気味だったそうだ。

小池都知事はこれまで、「最悪の事態を想定するのが危機管理。何が危機なのかという危機の本質を見極めて手を打つことが重要だ」と話すなど、危機管理意識の強い政治家であることが分かる。

軽症者をホテルなどで隔離する小池都知事の作戦は評価できる

東京都知事選(6月18日告示、7月5日投開票)も控えている。何としてでも、安倍首相に緊急事態を宣言させて現職の都知事としての権限を確かなものにして自らの手で感染防御の采配を振るい、その結果を都知事選に結び付けたいのだろう。

そんな小池都知事には「感染症は社会の病気である」という自覚を持っていただきたい。行政の規制が厳しくなると、社会そのものが根底から揺らぎかねないからである。

もちろん医療の崩壊は避けなくてはならない。新型コロナウイルス感染症だけが病気ではない。他の患者の治療ができなくなるようでは如何ともしがたい。深刻な院内感染から手術の予定を先延ばしにした大学病院も都内で出ている。

中国や欧米で医療崩壊を起こした原因は、軽症者で病院のベッドが一杯になり、重症者を治療できなくなったことにある。患者の病状に応じて振り分けて治療を進めるトリアージがうまくできなかったのだ。小池都知事が急遽、軽症者をホテルなどで隔離する作戦に出たことは大いに評価できる。