本音は「自由な時間があったら働きたい」

はっきり言って男のエゴだとはわかっているが「かっこいい父親」ではいたい。保育園の中では最長老の父親なので、肌には気をつけなくてはと思い、子供が生まれてから化粧水、乳液と顔パックは欠かさず行うようになった。今も、服は意地でも阪急メンズ東京で買うことにしている。『LEON』『UOMO』などのファッション誌や『BRUTUS』『Pen』『GOETHE』などのライフスタイル雑誌は熟読している。

TOKYO MX「田村淳の訊きたい放題」の楽屋にて
TOKYO MX「田村淳の訊きたい放題」の楽屋にて(写真=筆者撮影)

このように、男女二人でやりくりすること、特に家事・育児に具体的に時間を割くこと、そのために、仕事は減らすこと。これが私なりの答えだった。

ただ、自由な時間があったら何をしたいかと聞かれると、「働きたい」と答えるだろう。そう思って、常にモヤモヤしている。

20年前の終電かタクシーが当たり前だった頃、ときには朝から早朝まで働き山手線を2周して仮眠をとりサウナに寄って出社していた頃や、10年前の駆け出しの物書きでなりふり構わず働いていた頃に戻りたいかというと、そうでもない。社畜から家畜になることができた。ただ、これでいいのかと悩むことは正直ある。

腰をすえて、落ち着いて原稿を書きたい、本を読みたいのだ。いまそうした時間は毎朝の2時間に限られている。

育児をしながらバリバリと働くのは無理だと気づいた

このモヤモヤを晴らすために、私はたまに「NO残業デー」ならぬ「YES残業デー」や「週末合宿」の日程を確保することにしている。妻子に実家に帰ってもらい、その時間、集中するのだ。

私は父が早逝し、母に育てられた。両親とも歴史学者だった。幼少期から10代にかけては突然「親戚の○○さんの家に泊まりに行ってきなさい」と言われた。私や弟が親戚の家に泊まる日に、母は研究に集中し、論文を書いていた。遊園地に連れて行ってもらったときは、母は木の下で洋書を読んでいた。このようなやりくりも必要なのだと思う。

ただ、そもそもずっとバリバリと働き続けるのは無理だ。もっというと、私はその競争に巻き込まれずにすむことができているとも言える。長く生き、続けることこそがポイントだと考えている。だから、忘れられない程度にメディアで発信している。健康こそが大切だとも気づき、娘が1歳半になった頃には酒を完全にやめた。