また、過去の分析と、将来の予測の精度の高さは、全く異なるものであることも認識しておく必要があります。

サイコロを1万回振って4の目がでた確率を正確に計算しても、次に4が出る確率が1/6であることに変わりはありません。この場合は、過去のデータの正確性は将来の予測のためになんの意味も為しません。

正確なデータより目的の設定が重要

データによって分析をする際は、自分が集めようとしているデータが、「本当に伝えたい内容という目的に対して適切な手段なのか?」ということを考えましょう。

分析のインプットとして、目的を明確にし、その目的に沿ったデータを使うことに加え、アウトプットを考える際に重要なのは、データ分析の「結果」を伝えることではなく、「結論」を伝えることです。

数字や統計用語が入っていないシンプルな結論こそが説得力を持つのであり、データの精度の高さそのものが説得力向上につながるわけではありません。

自分が今知る必要があることを理解していれば、必要となるデータの精度も自ずと見えてきます。

正しい目的に対して正しいデータとはどういうものなのか、その一例を確認してみましょう。

例えば、コールセンターにて「お客さまからのクレーム対応が不十分ではないか?」という状況を確認したい場合、どのようなデータ分析が有用でしょうか。こういったケースでよく用いられるのは、図にあるような内容別の苦情件数の推移グラフです。

【図表】クレームの対応が不十分では?という指摘が正しいか検証したい

しかし、それでは先の目標は達成できません。件数が減っている項目があったとしても、それが偶然なのか、クレームに対応できたため減っているのかが確認できないからです。

つまり、このグラフでは説得力があるとはいえません。

では、どのようなデータならば有用でしょうか。苦情の件数に対して、どれだけ対応できているか、というデータが必要です。全クレーム数に対して対応を行った比率、つまり「クレーム対応率」の比率を出すべきではないでしょうか。その推移を追うのか、カテゴリーごとの数値を出すのか、競合他社との比較を出すのかは、さらに目的に応じて選択します。

対応率という1つの数字より、内容別の苦情件数の推移のほうが、情報量が多く、データの精度は高いといえるかもしれません。