長距離バスのような「濃厚接触」がなければ感染しない
毎日新聞の社説(1月30日付)は「新型肺炎の国内対策 不安に応える情報発信を」との見出しを付けてこう指摘する。
「中国を発端とする新型肺炎に日本人が日本国内で感染したケースが明らかになった。武漢からのツアー客を乗せたバスの運転手で、バスの中で客から感染したと考えられる」
「密閉された空間で長時間感染者と過ごせば感染のリスクがあることは予想されていた。家族内の感染と同様であり、その点では想定内のできごとである」
このバス運転手の感染は、武漢に行ったことのない日本人が日本国内で発症した最初の事例として取り上げられている。だが、これも毎日社説が指摘するように想定された範囲でのことだ。驚くことではない。長距離走行のバスのように、長時間、共に過ごせば感染する。厚労省が注意している濃厚接触の分かりやすい例である。言い換えれば、そこまでの接触がなければ感染しないのだ。
世界中の専門家が一丸となって新型ウイルスに立ち向かっている
毎日社説は訴える。
「政府は対応の判断を自治体任せにせず、根拠のある基準を示してほしい。それが、人々の不安や感染者への差別を抑えることにつながる」
「ただ、その場合にむずかしいのは、今回の新型コロナウイルスの性質がまだよくわからないことだ。軽症者や、無症状の感染者、潜伏期間にある感染者からどの程度感染するのかもはっきりしない」
「無症状や軽症の人からもかなりの確率で感染するとすれば、武漢とのつながりがわからない感染者が今後、国内でも出てくるだろう。その場合には新たなステップの対応が必要で、今から備えを進めておくことが重要だ」
ウイルスの分析は各国の研究者の協力で進み、詳しい性質がわかるようになっている。培養に成功したというニュースもある。ウイルスの有無を短時間で確認できる検査キットや、症状を軽くするワクチンの開発も始まっている。特にワクチンは新型インフルエンザ対策で培った細胞培養の技術などを駆使すれば、量産のめども立つはずだ。
いま世界中の感染症の専門家が一丸となって、新型コロナウイルスに立ち向かっている。その姿は感動的だ。国際政治の世界でも、こうした協力態勢があれば、さまざまな問題が解決できるだろう。無用の駆け引きやプロパガンダが人類の足を引っ張っているのではないかと思う。