読者の不安を煽るような筆運びの朝日社説

朝日社説は患者と死者数の多さを示し、二次感染と潜伏期間中の感染を指摘する。読者の不安をあおるような筆運びである。しかも「長い戦いになる」とまで書く。

「思い起こすべきは過去の教訓だ。09年に発生した新型インフルエンザでは、発生国への渡航歴に注目して水際で警戒を続けた。ところが実際は、現地に行っていない高校生から発症者が見つかり流行へとつながった」

人から人へと伝播する新型インフルエンザは水際では防ぎ切れない。09年の新型インフルエンザは、アメリカとメキシコの国境辺りからアウトブレイク(地域感染)を起こし、数カ月で世界中に広まるパンデミック(地球規模の感染)を引き起こした。果たして今回の新型コロナウイルスはそこまで感染力が強いのだろうか。疑問である。

感染症対策に欠かせないのは、バランス感覚

朝日社説は書く。

「強い毒性をもつという想定も違って、症状の軽い患者を中心に急速に拡大。指定医療機関では収容しきれなくなる恐れが生じて、混乱も起きた」

この書き方も疑問が残る。あの新型インフルエンザウイルスは、確かに病原性(毒性)の弱いタイプだった。一方、今回の新型コロナウイルスは、感染力も毒性も弱い。よって朝日社説が指摘する医療機関の混乱は起きないだろう。

一方で、朝日社説のこの部分は同感だ。

「未知の感染症への対応は、ときに相反する要請の間で難しい判断を迫られる。ひとつは、常に最新の知見に基づき、被害を過小に見積もらないこと。もうひとつは、行動の自由を制限する措置は最小限とし、人権を不当に抑え込まないことだ」

要は感染症対策に欠かせないのは、バランス感覚なのである。