都知事選でも公明党から自民党候補の支持を受けられる
創価学会は巨大な組織ゆえ、選挙の際には複雑な指示を降ろしにくい。「衆院選では自民、都知事選では非自民」というわけにはいかない。結果として都知事選でも、公明党は自民党が擁立する候補を応援することになり、小池氏を破ることができる、という理屈は、一定の説得力がある。
自民党内ではまだ具体的な都知事選候補者名は上がっていない。橋本聖子五輪担当相、鈴木大地スポーツ庁長官らの名が浮上しては消える状況だが「変則同日選」となり、公明党の協力が得られる見通しとなれば、有力候補を口説きやすくなるかもしれない。
ただし、このシナリオは重大な欠陥がある。小池氏と自公系候補の一騎打ちという前提ならば「変則同日選」の効果はあるだろう。しかし、都知事選では国政野党系も統一候補の擁立を目指す。もし衆院選と同日になれば、野党側は野党共闘の象徴となる候補を立てようとするだろう。
そこで浮上するのが山本太郎氏だ。消費税引き下げなどを掲げる山本氏は基本的には国政志向で、比例代表の掘り起こし効果も考慮して次期衆院選の東京比例ブロックなどから出馬するとの見方が有力だ。ただし、都知事選と同日となると話が違う。
当選ラインが下がれば、山本太郎都知事は十分にあり得る
マスコミは連日、都知事選を集中的に取り上げる。そこで小池氏らと対等に山本氏がメディア露出すれば、東京に限らず全国へのアピール効果は絶大だ。
山本氏は2013年の参院選の東京選挙区では4位当選。ことしの参院選では比例代表で出馬し、東京を中心に100万票近い得票を得ている。小池氏と自公候補が激しく争い、当選ラインが百数十万票レベルまで下がってくれば山本氏が漁夫の利を得ることは十分にあり得るのだ。
そうなれば、衆院選でも野党側に一定の風が吹き、自公勢力は議席を減らすことも考えられる。
それだけに、安倍氏も慎重な判断が求められる。衆院議員側が「一地方の知事選のために衆院議員にバッジを捨てさせるのか」という抵抗することも考えられる。しかし、来年は東京五輪を前に、都知事選を核とした激しい政治ゲームが行われることは忘れないようにしたい。
「振り出し」が「小池氏打倒」で「上がり」が「山本太郎知事」というようなことになれば、かつてないようなドラマチックな展開となる。