外国から日本に移り住んだ家族の中には、容姿や文化の違いを背景に陰湿ないじめを受けている子どもがいる。同級生から「ガイジン」と蔑まれながらも強く生きようとした女性の生涯を、NHK取材班が追った――。(第3回/全3回)
※本稿は、NHK取材班『データでよみとく 外国人“依存”ニッポン』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
日本ではなく「カナダに残っていれば……」
「天然パーマ」「毛が濃いんだよ」
彼女がその容姿に対して毎日浴びせられた言葉。黒板に書かれた彼女の似顔絵に投げつけられたスリッパ。その少女は、過去に体験した記憶から逃れることができず、心の傷が癒えることはなかった。「いつまでたっても、普通の女の子には戻れない」。そう訴えた彼女はどこにでもいるような女の子で、あえて少し違うところがあるとすれば、それは彼女のルーツだった。
高橋美桜子さんはカナダ人の父親と日本人の母親の間に1989年、カナダで生まれた。その後、両親は離婚。美桜子さんは4歳半から、母親の典子さんとともに日本で暮らした。
だが、母の典子さんは日本に帰国したことを今も悔やんでいる。
「カナダでは一人一人に自分の考えがあることを幼い時から教えていました。自分の考えがあるということは、相手にも違う考えがある。みんな違って当たり前という発想が自然と身についたんだと思います。だから、カナダに残っていれば……。今でもそう思っています」