ちなみにフォーエバー21の2大競合であるファストファッションのH&M、ザラ(ZARA)の親会社はこの事件の後、バングラディシュ労働者の安全確保の協定に署名。またH&Mはリサイクルプログラムの充実、ZARAも2025年までに全ての素材をサスティナブルなものに変えると宣言している。オンラインの人気ファストファッション・サイトも「サスティナブル・エシカル」を前面に打ち出している。

こうした部分でフォーエバー21は後れを取ったと言っていいだろう。

「ナイキ」が10代の人気トップになっている

ファストファッションが懐疑的に見られるもう一つの理由は、アメリカのファッションの主流がスポーツとカジュアルを融合した「アスレジャー」に移行していることも大きい。キム・カーダシアンなどのセレブや有名インフルエンサーも、アスレジャーを颯爽さっそうと着こなしている。

そんな中で今、10代に人気トップのファッション・ブランドはナイキだ。カニエ・ウェストやドレイクなどヒップホップスターや、コム・デ・ギャルソンなどハイファッションとのコラボでファッション・ブランドとしての地位を得ている。

筆者撮影
ニューヨークにあるNIKEの店内

その他アディダス、ルルレモンなど、本格的スポーツウエアとしてのクオリティと機能性、さらに最先端のファッションエッジを持つブランドが強く支持されている。

Z世代に話を聞いてみると、着心地よく、シンプルで何にでも合わせやすいスタイルで自分だけのオリジナルの着こなしのアイテムになるところがいいと言う。

さらに体型を選ぶランウェイファッションに比べ、どんな体型でも肌の色でも、性別にも関係なく平等におしゃれに着こなせて、同時に価格帯も手ごろなアスレジャー・スタイルは、多様性や個々の違いを肯定的に捉える「ダイバーシティ&インクルージョン」の時代の象徴でもある。

中古品、フリマ人気でハイブランドが再び注目

筆者撮影
ルイ・ヴィトンのショー・ウィンドウ。スポーティーな要素を取り入れたアウターを展開していた

一方、ファストファッションより高くても長く着られる服という理由からハイエンドのブランドも再び注目されている。しかし、ただハイエンドというだけではない、グッチ、ルイ・ヴィトンといったブランドは、ヒップホップスターといち早くコラボしてダイバーシティをアピール。特にルイ・ヴィトンは、トップ・ストリート・ブランドのオフホワイトのデザイナーを起用し、革命的と話題を呼んだ。バレンシアガも特徴的なスニーカーでブランドイメージを一新し、ストリートのテイストでZ世代をつかんでいる。

とはいえ、ミレニアル世代やZ世代の多くは高級なブランド物を定価で買うことはない。代わりにヴィンテージやリセールショップがネット上で大人気となっている。ユーザー同士で売り買いできるサイトや、会員制でデザイナーズブランドをレンタルできるサービスにも入会希望者が殺到している。これらはいわゆるシェアリング・エコノミーと呼ばれるものだ。こうした店やサービスも、ファストファッションに取って代わっている。