オンラインで何でも買える若い世代にとって、わざわざ店に行くということはネットでは体験できない付加価値を味わうということ。ブランド・イメージや哲学が反映され、そこでしかできない楽しさを味わいながら買い物する、小売店もエクスペリエンス・エコノミー(体験型経済)の時代に対応したものが生き残るのだ。

ただ安く、ぱっとしない服が並んでいるだけ

いわゆるファストファッションは、ファッションショーのランウェイに登場したスタイルをいち早く大量生産して流通させるものだが、そのコンセプト自体がもう古くなっている。

筆者撮影
ニューヨークにあるフォーエバー21の外観

その原因は顧客の世代交代だ。かつての中心だったミニレニアル世代と次のZ世代は繋がっていながら、そのテイストや価値観は大きく違う。その違いこそがフォーエバー21を危機に追い込んだとも言える。

かつてフォーエバー21のショップには、最新のスタイルがいち早く並び新鮮な衝撃を与えた。その価格の安さも、ミレニアル世代にとってはまさにマジックワンダーランドだった。

ところが、デジタル・ネーティブのZ世代にとってはまったく違う。彼らは新しく安い服をとにかくリサーチする。また、ランウェイに出たデザインは即ネットで世界に拡散され、店に並ぶ頃にはもう新しくなってしまっている。Z世代にとってファストファッションの店はファストでも何でもなく、ただ安くぱっとしない服が並んでいるだけの店なのだ。

「環境に悪い」イメージを変えられなかった

加えて、Z世代はこれまでの世代の中で最も環境にコンシャスな世代だ。ネットに氾濫する情報をすぐキャッチするので、もちろん繊維産業による環境汚染にも敏感。そういう中でファストファッションは「安いけれどすぐに破れる使い捨ての服、さらに環境に悪い」というイメージが付きつつある。あるZ世代の女子は「ファストファッションはもっと売るためにわざと破れやすく作っているのでは」と言うほどだ。

そして彼らは消耗品に対し、エシカルでフェアトレードであることを強く求める世代でもある。2013年、世界のファストファッションの服を生産していたバングラディシュの工場が違法建築により崩壊し、同じ年頃である10~20代の工場労働者ら1000人以上が死亡した悲劇的な事件は、人権問題としても大きな衝撃を与えた。この事件が、ファストファッションに対する世界の見方を大きく変えるきっかけになったのは間違いない。