スクラムで首の骨が変形した堀江翔太選手を再生させた

今回のワールドカップ初戦のアイルランド戦でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたフッカーの堀江選手ですが、2015年の時点では、長年にわたって組んできたスクラムの衝撃から首の骨が変形してしまい、それが首の神経を圧迫するまでになっていました。そのため、左手の指を思うように動かせないまひ状態になるまで悪化していたのです。

堀江選手は、2015年のワールドカップが始まる7カ月前に手術をし、代表に合流したのは4カ月前でした。私は彼と話し合い、ワールドカップに懸ける彼の思いを聞く中で、「私にできる精いっぱいのことをして、何とか間に合わせてあげなければいけない!」という気持ちになりました。

もちろん、施術してみないと間に合うかどうかはわからなかったのですが、体の構造のことや、私の経験してきたことを踏まえていくと十分可能性があるということを伝えました。

そして、ケガを治すためであれば何でもする覚悟を決めた堀江選手と、二人三脚のトレーニングが始まったのです。手術のリハビリをしながらトレーニングもこなし、何とかラグビーができる体にまで再生した彼は、見事、不屈の精神で先発出場し「ブライトンの奇跡」に貢献したのです。

手術をせずにケガをケアする方針を採っている

私は独自に研究を重ねたバイオメカニクス(スポーツ力学、身体運動学)の観点からケガの状態を分析し、自ら開業した治療院「SATO.SPORTS」にて手技中心の施術を行っています。

一般的には手術が必要と思われるようなケガでも手術をせずに施術を行う方針を採り、それによって数多くのスポーツ選手を早期に現場復帰させるお手伝いをしてきました。

その技術を応用し、アスリートだけではなく一般の方々にも簡単にできるストレッチをいくつか考案しました。動かなくなった筋肉を目覚めさせ、一生痛まない体を自分で作るエクササイズを、拙著『取れない疲れが一瞬で消える 神ストレッチ』(KADOKAWA)からご紹介します。