その揚げ句、違法就労が発覚したからといってビザの更新を拒み、今になって留学生たちを続々と母国へと送り返している。まさに「マッチポンプ」だが、借金を背負ったまま帰国を強要される留学生たちはたまらない。

出国準備まで1カ月の在留を認められたダワ君は、さらにもう1カ月間、日本に居られることになった。8月の航空券は割高で、彼には購入できるカネがなかった。その点に入管の担当者が温情をかけてくれたのだ。

「失業対策」として人間を“売買”した責任は

ブータンに戻っても仕事が見つかる当てはない。技能実習生として再来日し、借金返済のため出稼ぎに励む道もある。しかし再来日には、上野法科ビジネス専門学校から受けた「除籍」処分がネックとなるかもしれない。実習生のビザを申請する際に同校の在籍証明書が求められた場合、出してもらえない可能性があるからだ。

だが、そもそもダワ君は日本に戻ってくることなど望んでいない。帰国前日の9月11日夜に会った彼は、吹っ切れたような表情でこう話していた。

「僕は日本のアニメが好きで、アニメーターになる勉強がしたくて留学したんです。今さら実習生になっても、留学生のときと同じように肉体労働でこき使われるだけのこと。もう日本で働くのはこりごりです。出稼ぎに行くなら、ブータン人が多い中東にでも行きますよ」

ダワ君らブータン人留学生は、自国政府が「失業対策」として進めた留学プログラムによって日本へと“売られた”。そして彼らを“買った”日本側は、「留学生」としてのみならず底辺労働者として都合よく利用し続けた。その揚げ句、違法就労をとがめ、日本から追い出しにかかっている。留学生たちを食い物にした連中の責任が問われる日は来るのだろうか。

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