「えー」「あー」「えーっと」……。こうした無意味なつなぎ言葉を「フィラー」という。スピーチトレーナーの高津和彦氏は「会話やスピーチでフィラーを連発すると、相手に悪い印象を与えやすい。簡単な心がけで、フィラーはなくすことができる」という——。

※本稿は、高津和彦『スピーチや会話の「えーっと」がなくなる本』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

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会話の中の「えー」「あー」「えーっと」が不快なワケ

フィラー(※)は挿入語、それも不要な言葉です。

※「えー」「あー」「えーっと」など、会話やスピーチなどの合間に挟み込まれる言葉のこと。フィラー(filler)とは、「詰め物」「充填剤」「つなぎ」「緩衝材」といった意味を持つ英単語。

本来は入れる意味もない、話し手が入れようという気もないのに、意に反して勝手に入ってしまう言葉です。なぜ不要といえるのでしょうか。それは入ることによって、次のようなデメリットがあるからです。

デメリット1【話が長くなり、文意が複雑化する】

フィラーが入ると、その分だけ話が長くなり、文の構造が複雑化します。それだけ聞き手にとっては、話の内容をくみ取りにくくなります。端的にいえば、長文はわかりづらく、短文はわかりやすい。客観的に見ても、字数に比例してわかりづらくなります。

「比例します」(6字)
「えー、まっ、比例していくと、あのー、ということです」(22字)

6対22。当然、聞き手は前者のほうがすぐに頭に入り、理解できます。

また、「えー、まっ、比例していくと、あのー……」と言われると、この先、話の内容はどこに向かっていくんだろうと、聞き手は一瞬思ってしまいます。この「心の揺れ」がストレスになるのです。

屁理屈をこねる人はこう言うかもしれません。早口で言えば時間がかからないからすぐに理解してもらえるのではないか、と。

これは一理あるかもしれませんが、通常の場合において人は、フィラーが出るときに〈、〉(読点)で言葉が途切れます。「まっ、比例、ということです」の、それぞれの〈、〉で必ず止まります。だから早口で話したとしても、結局その分、時間がかかってしまいます。

そもそも、フィラーも含めて早口で一文のように見せかけようとしても、聞き手の耳が追いつきません。不要な語が散在しているので、余計わかりにくいということもあります。

一方、「比例することになってくるんですよね」の場合は文は長くなりますが、〈、〉(読点)でセンテンスの文節(センテンスを区切った最小単位)が必要以上に区切られていないので、「比例します」と同じくらいわかりやすい。これはフィラーが入っていないからです。

とはいえ、より時間がかかることと、長いとフィラーが入る可能性が高まることは否めません。