2016年、危険ドラッグを製造・所持したことから罰金50万円の略式命令を受け、NHKをクビになった元アナウンサーの塚本堅一氏。彼は、「念願の東京アナウンス室に異動でき、プレッシャーを感じていた。そこに“心の隙間”があったのかもしれない」という――。(第2回、全3回)
※本稿は、塚本堅一『僕が違法薬物で逮捕されNHKをクビになった話』(KKベストセラーズ)の一部を再編集したものです。
何も知らずに勝沼ひとり旅を満喫
山梨県の「勝沼ぶどう郷駅」に一人で降りたったのは、2016年の1月9日のことでした。
この日から4連休だった私は、前日に同僚のカメラマンから、一回分残った青春18切符を買い取っていたので、それを使って日帰り温泉を楽しもうとやってきたのです。
古い駅舎から外に出ると、すぐにブドウ畑が広がります。冬なので乾燥した葉の無い枝ばかりのブドウ畑を抜け、丘を上ると温泉がありました。よく晴れた日で、露天風呂からは甲府盆地と南アルプスを見渡すことができます。
風呂に入ったあと、同じ施設内にあるレストランで遅い昼食をとり、地下のワイン貯蔵庫でワインの試飲をしてすっかりほろ酔いになりました。勝沼の一人旅を十分満喫した私は、のんびり二時間半かけて各駅停車で東京に戻ります。