市場規模1兆円へ。後発薬他社と競争激化

替地恵子薬剤師は限られたスペースでのジェネリック薬と新薬の在庫確保に苦慮しているという。
替地恵子薬剤師は限られたスペースでのジェネリック薬と新薬の在庫確保に苦慮しているという。

多くの薬剤師は大型病院ではなく、保険薬局に勤務している。調剤をする保険薬局は、日本全国に約5万件あるという。そして、ここに勤める薬剤師は12万人。登録薬剤師のおよそ半数に当たる。

東京有明の国際展示場近くの新しいオフィスビル2階にあるケイポートドラッグマートの薬剤師である替地恵子さんもそんな1人だ。昨年7月にオープンしたばかりだが、利用者には周辺の大手IT企業や外資系金融機関に勤めるビジネスマンが多い。情報感度が高く、ジェネリック医薬品についても、抵抗が少ない人たちである。この薬局の運営を任される替地さんは、処方箋の様式が変わる前の、今年3月半ばから、窓口を訪れる患者に対して質問を行った。

IT系ビジネスマンは抵抗なく後発医薬品を受け入れるという。
IT系ビジネスマンは抵抗なく後発医薬品を受け入れるという。

「まず、ジェネリックを知っているかどうか確認しました。ほとんどの人が理解していましたから、変更への意思を確認すると、逆に成分や価格を聞かれました。そんなときには、処方された新薬と変更可能なジェネリックの成分やサイズ、薬価の比較表を見せることで、すんなりとジェネリックを受け入れてもらえました」

これによって、4月以前は、調剤薬の10%前後だったジェネリック医薬品が、現在では45%にまで増えた。これまでの顧客データが1800人ぐらいで、その中には軽い風邪や腹痛などの一見客も含まれる。こうした実態を見ると、やはり、薬剤師の意欲的な取り組みが、新薬からの切り替えに大きな影響を与えるということがわかる。

もうひとつ、この薬局でのジェネリック調剤が進んだ理由に、同じビルの5階で内科クリニックを開業する医師の協力もある。もともと、新薬とジェネリック医薬品を併用して処方しており、替地さんの提案に、嫌な顔を見せることもない。開業医と保険薬局の薬剤師の理想的な関係といえる。

沢井製薬の想定では、現在のジェネリック医薬品の市場規模は4000億円。それが将来は1兆円に伸びると予測する。当然、市場の拡大の中で、自社のシェアを広げていきたいというジェネリックメーカーとしての期待値も含まれているが、そのレベルに持っていくには制度と現場の両輪がバランスよく回転する環境が不可欠だ。

新薬とジェネリック医薬品の問題は、患者が消費者という視点に立てば、決して難しい問題ではない。澤井弘行会長は、こう語っている。

「新薬の特許が切れれば、同じ効き目でおよそ半額の薬が出てきます。そうなれば、患者さんに対しては、値段の高い新薬メーカーの薬か、ずっと安い後発薬か、どちらを選びますかと質問すればいいということになります。どちらが患者さんのためになるのか、いわずもがなでしょう。そのための情報提供、品質保証、安定供給をするのが当社の使命だと考えています」

(小林 靖、熊谷武二、尾崎三朗=撮影)