30歳で『古事記』にのめり込む

岡田はそうした学びの日々を「ひたすら空洞を埋めるために勉強をした。10年目くらいで身になってきて、同時に周囲から評価や信頼を得られるようになった気がする(※9)」と振り返ります。

その「10年目くらい」にあたる2005年から岡田が担当するのが、ラジオ番組『GROWINGREED』です。「人間は成長する葦である。『考える葦』は人と出会い、学び、発見することで『行動する葦』へと成長していく」という岡田にピッタリの番組コンセプト。五木寛之や林真理子、姜尚中といった作家から、投資家や建築家、東大教授に芸術家……と多ジャンルの専門家がゲストとして登場し、その数は500人を越えています。聞き手として彼らと対峙する岡田に信頼を寄せ、何度も登場する人もいるほどです。

岡田は「僕自身には才能なんてないけれど、唯一あるとしたら才能ある人々と出会える能力だと思っている(※12)」と語っていますが、その唯一自認する出会う能力ですら、自身の努力が引き寄せたものに思えます。ちなみに読書の習慣は大人になっても途絶えず、30歳の時に「今、読んでいる本は?」と聞かれて『古事記』と答えています(※13)

3種類の武術を習得

こうして岡田は、周囲との差を自覚することで、読書や映画といったインプットをするようになり“人生について考える時間”を多くし、成長をしてきました。

その周囲との差についての自覚は、演者側だけではなく、プロであるスタッフにも及びます。しかも、ある程度キャリアを積んだあとにも、現場や分野が変わる度に「追いつかなきゃ」精神は変わらず発動し続けているのです。

「様になるようにカラダを動かす技術も身につけないと、スタッフの方と対等に仕事ができない(※9)

作家・金城一紀と組んで企画書を通し、映画化までは7年をかけて実現した『SP』(ドラマ版は2007年に放映。その後2部作で映画化)の時にはフィリピンの武術カリを学び、主演でありながらアクションを作るスタッフとしても参加しました(※14)

まずは自身で世界中の格闘技や武術を調べて、個人レッスンを開始。足がパンパンになるまで、鏡の前でひたすら棒を振るなどした後に、個人的に弟子入りまで果たします。

カリに加え、ブルース・リーに由来する格闘技ジークンドーと修斗の3種のインストラクターの資格を取得、他にも柔術や居合など5種のトレーニングを経験するまでに。風呂に入る前には上半身裸になって棒を振るのが日課の生活で、身体のために冬でもなるべく暖房をつけないようにするという徹底っぷりです(※9)