一家4人が心中した「春日部コート」(仮称)に家族と暮らすライターの建部博氏は、次々と起きる異変や災難を乗り越え、事故物件から退去することになった。平穏無事な暮らしを手に入れたかに見えた建部一家を襲ったその後の悲劇とは――。(第4回、全4回)

※本稿は、建部博『一家心中があった春日部の4DKに家族全員で暮らす』(鉄人社)の一部を再編集したものです。

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兄の受験票を燃やした美幸にできた友達

2011年4月の初旬。東日本大震災による混乱が多少落ちついてきたころ、携帯が鳴った。母親からだ。

ヤツからの電話がいい話だったためしがない。地震でテレビが壊れたから買ってくれとか言うんじゃねーだろうな。

「もしもし。どうした?」
「あのね、美幸が、なんかヘンな人と友達になったの。今夜ウチに来てよ。もう大変なんだから」

美幸は建部家の小学6年生の次女だ。以前オレが住んでいた事故物件の豊島マンション(仮称)に遊びに来たあとに、三男・雄介の受験票を燃やすという奇行に出たことがあるが、以降は落ち着いていたはずだ。ヘンな人と友達になったってどういうこった?

実家では、母親がリビングで神妙な顔をしていた。美幸の姿は見えない。自分の部屋にでもいるんだろう。

「どういうことだよ?」
「こないだね、美幸がパソコンいじってたのよ」

美幸がパソコンに向かってる姿はオレも何度か見たことがある。ソリティアとかのゲームをやっていた気がするけど。

「それでね、ワタシが後ろを通ろうとしたとき、バッて隠したのよ」。ノートパソコンを閉じて「なんでもない」と、ゴマかしたらしい。

「で、美幸がお風呂に入ってるときにね、あの子の携帯が鳴って。登録してない番号からの着信だったの」

あろうことか、母親はその電話に出てしまった。