夜中にうなされ、4人の入居者が相次いで退去した都内のマンションに住み始めてから1年余り。数々のトラブルに見舞われながらも事故物件で新婚生活を送っていたライターの建部博氏だが、埼玉県の実家にも異変が訪れる――。(第2回、全4回)
※本稿は、建部博『一家心中があった春日部の4DKに家族全員で暮らす』(鉄人社)の一部を再編集したものです。
ブレーカーが落ちていないのに停電
2010年2月の上旬、数日の間だけ埼玉県の実家に帰ることになった。浮気騒動でいろいろあった嫁とも今ではすっかり仲直りし、家族そろっての団らんだ。
夕食の後、部屋でまったり過ごすうちに、日頃の疲れからかウトウトしてきた。こんなに安心して眠れるのは久々だ。
ふと、周りの騒がしさにジャマされて目が覚めた。部屋は真っ暗。手探りで携帯を探すと、時計は23時を過ぎたところだ。リビングに行くと、母親と嫁が大騒ぎしている。
「停電よ、停電よ」
まったく、女ってのはこれだから困る。んなもん、ブレーカー上げればいいだけだろ。
しかし、どういうわけかブレーカーは落ちていなかった。すべてのレバーが上がったままだ。
「どうしたらいいの、ヒロシ君」
母親は懐中電灯を持ってうろうろしている。うーん、困った。5分ほどみんなであたふたするうち、いきなり電気が点いた。なんだよ。ワケわかんねー。
そして翌日、また同じことが起きた。時刻は23時を回ったころ。ブレーカーに異常はない。
「また停電? まったく、誰かのイタズラかね」
マンション外の配電盤をいじるヤツでもいるのだろうか。とんでもない嫌がらせだ。よし、明日は外で見張ってやる。