自殺未遂のサイトで知り合った謎の少年
「男の子の声だから『誰?』って聞いたら『池田です』って。中学生なんだって」
池田クンの説明によると、美幸とチャットをしていて意気投合し、連絡先を交換したそうだ。なるほどパソコンを隠したこととスジが通っている。あいつも年頃なんだな。
「そんなに心配しなくてもいいんじゃないの?」
「なに言ってんの。そのなんとかチャットサイト? ってのは自殺未遂する人が集まってるって言うんだから!」
はぁ? なんで美幸がそんなサイトに出入りしてるんだよ。オレまで怖くなってきた。まさか小6が自殺はないだろうけど、最近のガキはませてるからな。悩みでもあるのかも。
美幸の部屋をノックすると、無言でドアが開いた。表情が緊張してる。
「聞こえてたのか?」
「うん」
「池田クンとはまだ連絡とってるの?」
「…とってないよ」
ぜんぜん目を合わせてくれない。でも、あまりガンガン言うのも良くない気がする。
「なんでそんなサイト見てたの?」
「え、別に…」
「そういうのとか興味あるのか?」
「ないよ」
「池田クンは悪い人じゃないかもしれないけどさ、みんな心配するから、もうそういうサイトを見るのはやめろよ」
「…わかったよ、ハイハイ」
美幸はふてくされた様子でベッドに入り、頭まで毛布をかぶってしまった。
数日後、また母から電話があった。
『美幸ね、夜、電話で話してるみたいなのよ。絶対あの池田だよ』
あの年頃だから、中学生の悪っぽい男にあこがれてるだけなら健全だと思う。でももし…。
少し変わった同級生と偶然の再会
仕事帰りに駅から歩いていると、一人の女性とすれ違った。あれ? 誰だっけ、なんか見覚えがあるんだけど…。
向こうはすぐに気づいたらしい。後ろから声が聞こえた。
「建部くん?」
「へ? …もしかして、水野?」
思いだした! 小学校の同級生の水野だ。久しぶりだなぁ。
「建部くん、元気? 結婚、した?」
「ああ、うん。お前も知ってる同級生の真由美と結婚したんだ」
「そっか、ああ。良かったね。私は、元気です」
水野は少しばかり鈍い子だ。なんというか、感性が独特というか、口ごもったり、急に目線をあらぬほうへやったりするおかしな子なのだ。
「そうだ、じゃあ真由美ちゃんに、これ」
水野はメモを書いて差し出した。住所や携帯番号、メッセージが書いてある。こういうちょっとズレた律儀さもいかにも彼女らしい。
「ありがとう。渡しておくよ。またな」
家に戻ってその旨を真由美に伝えた。
「水野さんってあの?」
「そうだよ。変わってなかったわ」
「会いたいって言われてもねぇ」
ほとんど話をしたことはないのにと真由美は少し引いている。
「今度ウチに呼んでみるか」
「やめてよ~。なに話せばいいかわかんないもん」
オレはぜひ招きたかった。映画やドラマでも、ああいう少し変わった人は霊的なモノを感じやすいことになっている。このマンションに入って何を思うのか、ちょっと聞いてみたい。