心霊物件に住んで分かった唯一のこと

ただ一つだけ言えることがあるとすれば、霊の仕業とするかは別にして、あの部屋に住んだ結果、オレら家族は不幸になった、ということだ。どこに住んでいてもこうなっていたのかもしれないし、そうはならなかったのかもしれない。人間、未来はどうなるかわからない。

建部博『一家心中があった春日部の4DKに家族全員で暮らす』(鉄人社)

だけどあの二つの部屋に住んでいたからこそ、オレには家族の嫌な部分、人の心の奥底にある性悪な一面が目についたのだ。それは毎月の連載で原稿に起こすべく四方八方に目を配っていたからであり、やはり心霊物件に住んだからこそ、気づかされたのだ。幽霊なんているかいないか知らないが、幽霊物件に住むと、不幸になる家族は存在するのだ。

と、本来はここで終了するつもりだったのだが、もう少しだけお付き合いいただけるとありがたい。

これを書き始めたのは、令和元年6月2日の深夜のこと。筆が乗らぬまま半分終わったあたりでパソコンを切った翌朝、オレは娘の夏美が通う小学校の運動会に向かうべく、真由美が運転する車の、後部座席に乗り込んだ。長男の壱太を抱きながら。

交差点で一家を襲った悲劇とは……

自宅を出発して5分と経たないころだ。オレらの車は時速30キロで片側1車線の道路を走っていた。スピード違反もしていないし、脇見運転もしていない。目の前の信号が青だった為そのまま交差点を通過しようとした。

ところが次の瞬間、突如として左側から軽自動車が現れたのだ。直進するオレらの車の前を横切った、と言えばわかりやすいだろうか。真由美が「ヒッ!」と声にならない声をあげ、車を避けようと慌てて右側にハンドルを切った、そのとき、

ガチャーン!

オレらの車が軽自動車の横側に衝突したのだ。

建部家が乗った車と軽自動車が衝突した事故現場

さらに勢いのついたオレらの車は軽自動車を押したまま、民家の壁に激突し、ようやく2台はストップ。人間、いざというときはどうでもいいことを考えるようで、オレはといえば、衝突して数秒後には、「運動会の日なのにめんどくせーな」と考えていた。

よりによってこんな日に事故だなんて……。

落ち着くと、ふと、このあとがきのことを思い出した。まさか、豊島マンションが、春日部コートが、「本を出版するとは何事だ」と怒っているのだろうか。いやそんなことより、真由美、壱太、大丈夫か!?

幸い、双方に大きな怪我はなかった。実は妻の真由美は3人目を妊娠中であるが、なんともなかったということでホッと胸をなでおろした。事故の原因は相手の一方的な信号無視。車の修理代も全額向こう持ちだし、まあいいのだが……。

やっぱり幽霊っているのかな。いやいるわけないだろ。頭のなかの堂々巡りは今も続いている。

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