「マッチングサイト」で垣間見える人々の本音

ここまでは公的統計に基づいて、人々は結婚に何を求めているのか探ってきました。ここからは少し趣を変えて、普段はなかなか明らかにならない、恋愛と結婚における人々の本音を垣間見ていきましょう。もちろん、人はなかなか本音を見せません。そこで社会科学の研究者たちが考えたやり方は、インターネット上で出会いの場を提供する「マッチングサイト」に注目するというものです。

かつては「援助交際」の温床とみなされていたため、インターネットを通じた出会いには偏見がありました。そのため、マッチングサイトを通じてパートナーと出会ったことをおおっぴらに語る人は多くなかったかもしれませんが、最近はまじめな恋愛関係や、結婚に至るような付き合いを求める人のためのサイトも増えてきているようです。

私が以前住んでいたアメリカとカナダでは、日本と比べてかなり早い時期から、まじめな出会いの場としてマッチングサイトが活用されていた印象があります。少なくとも、マッチングサイトの利用に抵抗を感じているような人はほとんど見かけませんでした。

私の知人でもマッチングサイトを使っている人はたくさんいましたし、マッチングサイトを通じて結婚に至った同業の大学の先生も知っています。スタンフォード大学のポール・オイヤー教授は、自身のマッチングサイト利用経験をもとに『オンラインデートで学ぶ経済学』(2016年、NTT出版)という本を書いたほどです。

周囲の若い人たちから聞く限り、日本でもマッチングサイトの利用に対する見方が肯定的になってきているように感じます。マッチングサイトは、日本においても結婚成立に重要な役割を果たすようになってきているのかもしれません。

自己申告のマッチングサイトはウソだらけ?

アメリカなどに見られるマッチングサイトでは、利用者は年齢、人種、学歴、結婚歴、収入、身長、体重などを登録し、自分の写真もアップロードします。

ただし、利用者のプロフィールはすべて自己申告で、真偽は定かではありません。ということは、みんな自分のことをよく見せようと身長や年齢はサバを読み、写真も「奇跡の一枚」を使うのではといった疑問がわいてきます。

研究によると、会ってすぐにバレるような極端な嘘をつくことはないようです。よくある小さな嘘は、体重を2~3キロ過少申告するとか、身長を1~2センチ高くするとか、年齢を1~2歳サバ読みするというものです。