見ようによっては「安倍氏の岸田氏いじめ」だ
さらに根源的な問題がある。初の憲法改正は大変な難事業だが、これを実現した場合、その功績は誰のもとにいくのか。岸田氏がどれだけ頑張っても「岸田改憲」とは言われないだろう。間違いなく「安倍改憲」だ。岸田氏は安倍氏の引き立て役に回ることになってしまう。
それだけならまだいい。岸田氏は「安倍改憲」に協力することで、安倍氏から禅譲を目指すのだが、それも怪しい。改憲を実現すれば安倍氏の求心力はさらに高まることが予想される。「改憲」は安倍氏が勇退する花道ではなく「4選」に向けての入り口になる可能性も出てくるのだ。
そう考えると岸田氏の「憲法担当」はどちらに転んでもうま味のない仕事。うまく仕切れなければ政治生命を絶たれかねない。首尾よく改憲まで進めたとしても安倍氏を利するだけで、自身が首相の座に近づく保証は何もない。見ようによっては「安倍氏の岸田氏いじめ」ともいえる。
岸田氏は自身の処遇について「具体的な人事は首相が判断される。新しい時代においても私も宏池会(岸田派)の一員としてしっかり働くことができるポストを頂ければと願っている」と語るのみ。慎重居士らしく、言質を取らせない発言に終始しているが、当然ながら憲法担当となった時の苦難を、あれこれシミュレーションしていることだろう。