円はドルに対してじり高の展開となる可能性がある

今年5月以降、外国為替市場で円高傾向が続いている。8月26日には一時、104円台半ばまで円が買われ(ドル安・円高)、1月3日の高値(104円10銭程度)に接近した。円高傾向の背景には、米国の景気後退懸念の高まりや米中貿易摩擦への警戒などから、投資家が“リスクオフ”に動いたことがある。

この為替動向に関して、一部では「“異常”ともいえるペースで円高が進んでいる」との見方もあるようだ。確かに、8月26日朝方のような、ごく短期の動きに目を奪われてしまうと、そうした印象は拭えないだろう。

米カンザスシティー連邦準備銀行主催の経済シンポジウムに参加する連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長(右)=2019年8月22日、アメリカ・ワイオミング州ジャクソンホール

ただ、冷静に米国の金利(国債の流通利回り)の変化などを見ると、足元の円高は必ずしも“異常”なペースで円高が進んでいるとはいえないだろう。むしろ、ドル/円の為替レートは日米の金利差や米国のファンダメンタルズ=経済の基礎的な条件の変化などに沿って推移していると考えられる。

今後、米国経済は減速が鮮明化する懸念もある。今すぐではないにしても、いずれ米国が景気後退(GDP成長率が2四半期連続でマイナスの状況)に陥ることも考えられる。そうした状況を考えると、日米の金利差は縮小傾向に向かいやすい。やや長めに考えると、不安定な動きを伴いつつも、円はドルに対してじり高の展開となる可能性がある。たとえば「1ドル100円割れ」となっても、驚くには値しない。