米国は18~21カ月後に「景気後退局面」を迎える恐れ
8月に入り、米国の国債流通市場では、10年国債の利回り(長期金利)の水準が、金融政策の動向を反映しやすい2年国債の利回りを下回った(長短金利逆転)。
短期よりも長期の金利水準が低くなるということは、今すぐではないにせよ、近い将来、米国が景気後退局面を迎えるとの懸念が高まっていることを示している。過去の展開を振り返ると、長短の金利が逆転してから18~21カ月たつと、米国は景気後退局面を迎えている。
景気後退への懸念が高まる状況下、多くの投資家はリスクオフに動く。今後の動向次第では、これまで以上のマグニチュードで円キャリートレードの巻き戻しが進む可能性も排除できない。米国の長短金利が逆転したことは軽視できない変化だ。
今後の米国経済の動向を考えた時、GDPの70%程度を占める個人消費の動向は重要だ。足元、米国の個人消費は相応に好調だ。米国の労働市場では人手不足が深刻化している。それを反映して、賃金は緩やかに上昇している。それが、個人消費を支えている。旺盛な個人消費が設備投資減少のマグニチュードを緩和し、米国経済は相応の安定感を維持していると考えられる。それが、世界経済全体を支えている。
米国家計の債務残高は過去最高水準に
ただし、未来永劫、経済が右肩上がりの成長を続けることはできない。個人消費もしかりだ。すでに米国経済が減速している中、個人消費も徐々に鈍化する可能性がある。それに加え、家計の債務残高が増えている。これは、消費を圧迫する要因の一つだ。
6月末の時点で米国家計の債務残高は13兆8600億ドルに達した。これは、過去最高水準だ。クレジットカードローンの返済延滞も増えている。ここから先、個人消費が一段と勢いづくことは想定しづらい。
今すぐではないにせよ、米国経済が景気後退局面に移行する可能性は徐々に高まっている。長短の金利が逆転した状況が続く場合、米国経済の先行き懸念は高まるだろう。それに伴い、ドル/円の為替レートにも徐々に円高圧力がかかりやすいと考えられる。