米金利の低下による円高圧力の高まり
短期的な為替レートの変動に影響を与える要因の中で重要なのが、金利だ。投資資金は、金利の低い国(通貨)から、金利の高い国(通貨)に向かう。この基本的な理論を常に念頭に置き、ドル/円などの為替レートの動向を考えることが大切だ。
今、米金利が上昇する一方、わが国の金利が低位に推移しているとする。為替レートが変わらないと仮定すると、円よりも、米ドルを保有した方がより高い利得を手に入れられると期待できる。
その期待から金融市場では、円売り・ドル買いのオペレーション(取引)が増える。なお、多くの投資家は金利の低い円を借り入れて投資資金を調達し、円を売ってドルを買い、日米の金利差を獲得しようとする。これを“円キャリートレード”という。円キャリートレードはドル/円の為替レートに無視できない影響を与える。足元、米金利はわが国の金利以上に低下している。これが、円高圧力を高めている。
わが国の金融政策は事実上の限界に直面
米金利低下の大きな要因は景気の減速(GDP成長率の低下)だ。2018年7~9月期の米実質GDP成長率は前期比年率ベースで3.5%だった。その後、浮き沈みはあるものの、米国経済の成長率は鈍化している。
特に、米国の景気循環に大きな影響を与える企業の設備投資は低下基調だ。設備投資が伸びていないということは、米国経済全体での資金需要が低下していることを示唆する。資金需要が伸びないと、お金のレンタル料である金利には低下圧力がかかりやすい。
加えて、7月末、FRB(連邦準備理事会)が利下げを行った。FRBは米中の貿易摩擦の影響などが先行きの不確実性(リスク)を高めていると警戒し、予防的利下げを実施した。
一方、わが国の金融政策は事実上の限界に直面している。日銀がこれ以上の金融緩和を進めることは難しい。この結果、日米の金利差縮小と米国経済の先行き懸念からリスクを削減する(リスクオフに動く)投資家が増え、円が買い戻されている。