経営に役立つヒントに溢れている

アパレルECサイトZOZOTOWNを運営するZOZO代表取締役社長の前澤友作さんと一緒に直島(香川県香川郡)のアート巡りをしたこともあります。

アートをフックにしながらビジネスのネットワークが広がることは、これまでの経験でも多々ありました。日常的にアートに触れている人たちは、つねに新しいことを考えています。私の場合は経営者とアートコレクターを両方やっているから、なおさらそう思います。

競争相手が考えもしないことをつねに探していて、自分の発想や新しい概念を想像もつかないアプローチで組み合わせてコンテンツやサービスに変えていく。そのとき、アートはさまざまなヒントを与えてくれます。

ビジネスでは、経済学や経営学だけではなく、工学や心理学、哲学などとの連続的な組み合わせがイノベーションを生み出していきますが、じつはアートを巡る環境も同じようなメカニズムで動いています。アートを通してビジネスを見直してみると、これまでにない面白い見方ができるかもしれません。

さらに私の場合、ただアートに触れているだけで自然と目線が高くなり、「ビジネスマインド」が刺激されるのです。

これからの時代に必須な「大局観」とは

アートをすすめるもう一つの理由は、経営やビジネスで意思決定をする局面において必要な「大局観」が養えることです。

大局観とは、複数の可能性を視野に入れながら物事を注意深く観察し、そこから取り出した事実に基づき、論理的かつ体系的に思考し、判断する力です。

どの事実を取り出すか、それをどう解釈するかで、物事の捉え方は変わります。大局観が備わってくると、物事を正否だけで結論付けるのではなく、考えの根拠となる事実に基づいて、その妥当性を検討できるようになる。もっと簡単に言えば、複数ある答えのなかから、最適解を導き出せるようになるということです。そのとき、目の前の選択肢のなかにはなかった、まったく新しい解を見出すこともあるかもしれません。

ではなぜ、そのような大局観が養えるのでしょうか。

それは、アートは何かを教えてくれるものではなく、主体的な学びを促すものだからです。

アートには、答えというものがありません。じつはそこがアートの面白いところで、作品を理解したいと思ったら、深く考えざるをえません。

アートに触れることで身につけられる観察力と思考力は、0から1を生み出すアントレプレナーシップを磨くだけではなく、職場の人間関係や組織のチームビルディング、意思決定などにも役立ちます。そしてこれは、先の読めないこれからの時代に必要な能力だと考えています。