ナナメの関係が意思表明できる職場をつくる
小室 曽山さんはマネージャー、課長、部長とポジションが上がるほど、意思表明が大事だともおっしゃっていますね。
曽山 中間管理職こそ意思表明をしないと「偽善的責任感のワナ」にはまってしまい、成果を出せないんですよ。
小室 偽善的責任感のワナ?
曽山 私が勝手にそう名付けているんですけれど。たとえば「自分の役職は、別の人では代わりがきかない。組織に貢献するためには自分のことは置いておいて、今の仕事をやりきらねば。上司には黙っておいて、自分が実務をこなしてしまおう」と考えるのが、中間管理職の人に多い「偽善的責任感のワナ」です。使命感が強すぎて仕事を他人に渡せないのです。
部長からすれば、期待していることと別の仕事を課長がやっていて、業務がうまくまわっていないことがあります。
小室 以前コンサルティングをさせていただいたある企業でもそうでした。「朝メール・夜メール」を導入しようとしたところ、そこのチームリーダーは「なぜこんな業務の負荷が増えるようなことをやらされるのか? メンバーたちは別に全然残業で困っていませんよ」と私たちに必死に抵抗して、自分のところでコンサルを食い止めようとするのです。その後も部下を帰そうとしないし、部下たちもそのリーダーの前では「残業をしてもかまわない」と言うのです。
ところが、そのリーダーのさらに上司が、コンサルティングに同席して初めて、チームリーダーが残業を減らすことに抵抗していることに気づいたのです。上司は、「残業を減らすためのチームリーダーとしてあなたに入ってもらったのになぜコンサルタントが提案する朝メールをチームに広げていかないの? 本当にメンバーのみんなは残業を減らしたくないの?」と指摘しました。そして、その上司自らが指揮をとって、残業削減に取り組んだところ、とたんに残業が減りはじめたのです。
あとで聞くと、部下たちからは「実は残業が多くて、すごく疲れていたんですが、残業を減らすより、成果を上げるほうが先だというチームリーダーの前では本音が言えないし、言ってもリーダーが、その意見をせき止めてしまっていました」と本音が出てくるようになりました。