小室 今、職場で「人が足りない、足りない」という話を聞きます。「人が辞めても新しい人を雇わないので、現場が悲鳴を上げている」と。でも、この前、コンサルティング先のリーダーの方と話して、なぜそう感じるのかがわかりました。

<strong>小室淑恵</strong>(ワークライフバランス代表取締役社長)
小室淑恵(ワークライフバランス代表取締役社長)

その方は「忙しいから、人を増やしてほしい」と訴えているので、私が、どのくらい業務が詰まっているのかを説明していただいたのです。すると、そのリーダーの下には4人のメンバーがいて、うち2人は100時間超えの残業です。自分も含めてもう限界だというんです。

私は「あと2人のメンバーさんに業務を振り分けるとか、契約社員の方に分担してもらうことはできないのですか?」とたずねました。すると、リーダーの方はいろいろな理由をつけて「私にしかできない仕事なんです」とくり返すばかりです。

でも、矛盾していますよね? 人に仕事を振れない理由をいくつも挙げておいて、人がほしいと訴える。そういう人は、人を増やしても仕事を渡さないのだから、リーダーさんの残業時間は減りません。増員した人の分のコストがかかるだけで、そんな非効率なことを会社は永遠に認めないですよ。

「あなたが仕事を渡せる人になるのが先です」と、理解してもらうのに1時間かかりました。その方は理系で優秀なのに、このロジックが通じないので驚きましたね。

曽山 ああ、わかります。捨てられないんですよね、仕事を。でも、仕事を渡すように言われた側は、必ず「仕事を他の人に振ったらもっと時間がかかる、自分がやったほうが速い」と言ってくるんですよ。でも仕事の内容をよく聞いてみると、表計算の単純集計だったりするわけで。

こうなったら上司から「その仕事は捨てろ」と指示するしかありません。とりあえず、2週間捨て続けさせる。それが本当に必要な仕事なら、別の人が拾います。

業務の平準化を見える化するサイバーエージェントの「背骨グラフ」
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業務の平準化を見える化するサイバーエージェントの「背骨グラフ」

サイバーエージェントでは3カ月に1回「棚おろし会議」という、業務改善の会議を開いて、分担のバランスをならす習慣づけをしています。小室さんの「朝メール・夜メール」と同じように、情報を共有すること、仕事を他人に渡すことを習慣化することが重要だと思います。

それから、サイバーエージェントでは業務の平準化を「見える化」するために、部署ごとに1人当たりの勤務時間を集計してグラフにしています。退出時間の遅い人から並べていくと、ちょうど左を向いている「恐竜の背骨」のような曲線を描くことが多いので、私たちは「背骨グラフ」と呼んでいます。