うまく切り替えができる人の条件

私のかつての上司のことを思い浮かべると、「やることは全部やった」と過去の自分に満足されている方ほど、人生の次のステージにうまく気持ちを切り替えられているようです。たとえば元内閣官房副長官の石原信雄さんも古川貞二郎さんも、高い地位に就いていたことなど少しも鼻にかけたりされず、新しい試みをおもしろがり、若い人を応援する気持ちを持ち続けておられます。

その一方、いくらかの思いを残してリタイアされたような方は、気持ちの切り替えがうまくいっていないように感じます。

といっても、石原さんや古川さんのように、しかるべき地位に就いて「やることは全部やった」と振り返ることができる人はごくわずかです。たいていの人は、仕事人生のどこかで挫折を経験しています。

気持ちのうえでそのことを引きずり、引退後もなお「尊敬されたい」「バカにされたくない」という気持ちが強いようだと、自分が大事にされない環境や、評価されていないところに出ていくのが怖くなります。新しいことを始めるのが億劫になります。

年齢を重ねるうちに、自分でも気がつかないうちに鎧兜のような硬い殻を被っていくのが人間です。自然に過ごしていると、その殻はどんどん厚くなります。新しい場に出ていくのが億劫になるのは、そういうメカニズムがあるからです。

鎧兜を脱げない人たちは、自分の思いをわかって受け止めてくれる人たち、少し意地悪くいうと愚痴を共有している人たちの輪の中では生き生きとしています。そこが彼らにとって、「居心地のいい空間」だからです。

しかし、そんな輪の中に安住していては、「外」に出ていけなくなってしまいます。人生100年時代、それでいいのですかと私は問いたいのです。

外の世界を知るには、自分から踏み出すしかありません。今いる狭い部屋の窓を開けて、ぜひ、外の世界を見て新しい空気を吸っていただきたいと思います。

▼坂東流 現役を続ける3つの秘訣
1. 意識して「上機嫌」でいよう
2.「よいおせっかい」をしよう
3.「受け身」を捨て新しい友と出会おう
(構成=久保田正志 撮影=葛西亜理沙)
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